掟破りのSIM2枚挿しスマホ!ポストネットブックで加速するタブレットの最新モバイル事情【世界のモバイル】


2011年5月31日から6月4日まで台湾・台北で世界最大のPC関連展示会「Computex Taipei 2011」が開催された。中でも大きなブースを構えていたのは台湾の大手PC関連メーカーだ。

各社のブースはマザーボードやデスクトップPC、そしてハイエンドノートPCからネットブックまで様々な製品を揃え来場者に大きくアピールしていたが、昨年よりも増えていたのがタブレットやスマートフォンの展示である。

特にタブレットは「ポストネットブック」として各社が力を入れており、OEM/ODMメーカーも合わせると10社以上、展示製品の種類は会場全体で50以上を超えるほどと盛況であった。

ASUSブースにはタブレット「EeePad」専用のコーナーも

一方、大手PC関連メーカーはスマートフォン分野にも進出しているものの各社販売には苦心しているようだ。スマートフォンは毎日常に持ち運ぶ生活必需品であり、FacebookなどのSNSサービス利用が急増する中で販売台数も大きく伸びている。

大手調査会社IDCの報告によると、2011年第1四半期(1月-3月)の全世界のスマートフォン出荷台数は9960万台と1億の大台寸前まで伸びている。昨年同期が5540万台だったことから、この1年でスマートフォンの出荷数は約倍増した計算だ。

IT関連で他にここまで成長が伸びている分野の製品は無く、PC関連メーカーのスマートフォン市場への参入は新たな収益の柱として当然の流れでもあるだろう。

例えばDELLは5インチ画面の「Streak」や高級デザインの「Venue」を2010年に相次いで発売しており、市場では一定の評価を受けている。だが台湾メーカーのスマートフォンはまだブランドや製品名の認知度が広まっておらず、ヒット商品はまだ出てきていない。

台湾メーカーの中で最も早くスマートフォンを投入したAcerは「Liquid」という製品名でAndroid製品を展開している。だが端末デザインやスペックで大手メーカーの同価格帯の製品との差別化に苦心しており、またPCメーカーとしてのブランドが強いことが災いしてか一般消費者に同社のスマートフォンの認知度はまだまだ広がっていない。

Computex Taipei 2011で同社は4.8インチディスプレイを搭載するスマートフォンを発表したが、タブレットと同じ「Iconia」ブランドの製品としている。480x1024ピクセルと変則的な画面解像度、141.7x64.5x13.6mmのスリムサイズの「Iconia Smart」は他社のスマートフォンとタブレットの中間に位置する製品だ。

片手でも十分持てることからスマートフォンとして販売してもおかしくない製品だが、新機種を続々と投入し市場での話題性が高いタブレットと同じブランドを使うことで製品の特徴をアピールする考えのようだ。
AcerのIconia Smart

またGigabyteは新製品2機種を含む3つのスマートフォンを展示していたが、いずれもがSIMカードを2枚利用できるデュアルSIM端末である。スマートフォンでデュアルSIM搭載製品は大手メーカーからもまだ製品は出ておらず、3機種も揃えたことでGigabyteのオリジナリティーを十分打ち出すことができそうである。

とはいえデュアル3G対応ではなくGSM+W-CDMAということで、高速通信を多用するスマートフォンとしては片側が2Gしか利用できない点がウィークポイントだ。またデュアルSIMによる差別化は中国の中小メーカーがフィーチャーフォンですでに行っており、Gigabyteの製品もメインストリームというよりも「隙間狙い」という印象を若干受けてしまう。
Gigabyteのスマートフォンは全機種デュアルSIMカード搭載

これら2社の新製品に対し、ASUSが発表した「Padfone」はノートPC/タブレットに強い同社らしい製品である。単体で利用できる4.3インチ画面のスマートフォンを、10.1インチサイズのタブレット型ジャケットの背面に装着することでタブレット端末として利用できる。

2つのサイズの端末を1台で共用できることから、タブレット、スマートフォンを2台別々に購入して持ち運ぶよりも利便性は高そうだ。特に2台持ちの場合は双方の端末間で電話帳などのデータを同期する必要も出てくるが、合体型ならばその必要が無いのも便利だ。
スマートフォンを収納できるタブレット、Padfone

このように台湾のPC関連メーカーは自社ならではの特徴を出したスマートフォンの開発を行っているが、NokiaやSamsung、Appleなどの大手メーカーの追従ではなく「プラスアルファ」の要素を製品に盛り込み差別化を図っている。

しかし携帯電話事業者と太い繋がりを持っている大手端末メーカーと違い、製品を自らの販売ルートだけで消費者に提供しなくてはならないケースも多い。たとえ価格を安くできたとしても、事業者と契約して安価に購入できる大手メーカーの製品と同じ土俵で戦うのは至難の業だ。

ネットブック市場で台湾メーカーは開発スピードの速さと低価格により大手メーカーを打ち負かせた。だがスマートフォンは小型のPCではなく、その利用に通信回線を常時必要とする全く異業種の製品である。Appleも初代iPhoneの販売を開始したころは、優れた製品であったにも係わらず売り方や収益モデルの構築に苦心した。

台湾メーカーのスマートフォンも、製品そのものの魅力を高めることはもちろん必要だがそれだけでは消費者にアピールすることは難しい。新規メーカーによるスマートフォン市場への参入はAndroid OSの登場で敷居が大きく下がったが、製品を売るためには通信事業者との関係構築や販路の確保、ブランド力の確立などやるべきことは多い。

いい製品を作ったとしてもそれだけでは販売数を伸ばせない、それが携帯電話やスマートフォン市場なのである。今回各社が展示していた最新スマートフォンは果たしてヒット商品となるだろうか?今後の展開に注目したい。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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