【特集/JOURNEY】 刺激的で優しいアラブの国へ (2/8)
“歴史を学ぶ”といっても、ここドバイではそう堅苦しく構えることはない。
有象無象の列強がひしめいていたヨーロッパなどと違い、砂漠に囲まれていたこの地は
昔から比較的穏やかな歴史を重ねてきたため、歴史もシンプルで、数時間あれば概要が完全に把握できてしまうほどだ。
「ドバイの歴史を学べる数少ない観光名所」
まず行くべきは数少ない歴史的な観光名所となっているドバイ博物館だろう。ここはドバイ最古の建築物と言われる砦(1791年建築とされる)を改装した博物館だ。
ドバイがまだ砂漠の中の小さな漁村だった1800年代から、イギリスの保護区になって中継貿易の拠点となった1900年代初頭、そして第二次大戦後からアラブ首長国連邦に参加し、急速に発展を遂げた現在に至るまでの歴史を一挙に見ることができる。
さらにもうひとつ、是非行ってみてほしい場所がある。それがクリークの近くにあるバスタキア地区だ。
ここは歴史的な建物や街並みを保護している地区で、砂漠の民であるベドウィンたちの生活が想像できる、とても素敵なエリアとなっている。サンゴや砂を中心とした素材を使いベドウィンならではの手法で作られた建物は雰囲気満点。高いタワーに風を導き入れて、室内を涼しくするウインドタワーなどの歴史的な家づくりからは砂漠で生きる人達の叡智と逞しさを感じさせられる。現在は、カフェやギャラリー、ゲストハウスなどとして利用されているため、観光客も存分にオールドアラブの雰囲気を満喫することができる。
ちょっと角度の違う話になるが個人的にこのバスタキアエリアでとても印象に残ったのは、
現地の方(ローカル)たちの観光客に対するフランクさだった。
というのも、事前に聞いていた情報では、ドバイのローカル達は厳格で、あまり観光客と接したがらないと聞いていた。ところがバスタキア地区で出会ったローカルの若者たちは、
とても明るく、ユニークさを交えて自分達の歴史について教えてくれたのだ。もちろん観光地だけに、当然と言えば当然だが、観光業に従事するのは出稼ぎに来た外国人であるのが当たり前になっているドバイだけに、とても新鮮に感じられた。
そもそも過去の歴史を大切にする、という考え方自体、ここ数十年の間にドバイに根付いてきたものだという。それ以前は“過去は過去”と割り切って進むのが遊牧民族の血を受け継いできたローカルの人達の当然のマインドだったのだ。
次々と世界最大級の建築物をブチ上げることで、中東諸国の先頭を切って、“セレブリティ”なイメージを世界中に浸透させたドバイ。この推進力こそ、ドバイ人のマインドが現れているポイントと言えそうだ。
【Text=日比崇幸 / Photo=小林邦寿】
■livedoorHOMME【特集/JOURNEY】
『刺激的で優しいアラブの国へ 〜ドバイ〜』(全8回)
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