【力説自動車.web】第1回:クルマ離れなんてウソ! 震災時こそクルマを!


自動車評論家の金子浩久と小沢コージによる、過激な連載対談として話題を博した『力説自動車』(05年〜08年 月刊sabra連載/小学館・刊)。社会、経済、世界、生活、恋愛など「実はクルマこそが世情を語る最重要言語である!」とメッタ切りにして姿を消したあの伝説の『力説自動車』が、なんとウェブ上で復活! まずは挨拶代わりに過激な一発を……。

◆プロフィール
金子浩久
1961年、東京生まれ。主な著書に、『10年10万キロストーリー 1〜4』『セナと日本人』『地球自動車旅行』『ニッポン・ミニ・ス トーリー』『レクサスのジレンマ』『力説自動車』(共著)。日本カー・オブ・ザ・イヤー2010-2011選考委員。
オフィシャルサイト

小沢コージ
バラエティ自動車ジャーナリスト。横浜市出身。自動車メーカー、二玄社「NAVI」編集部員を経 てフリーに。現在『ベストカー』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『MONOMAX』『時計ビギン』などの雑誌『carview』『webCG』『日経BPネット』『Vividcar』などネットに多数連載。日本カー・オブ・ザ・イヤー2010-2011選考委員。
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津波が浮き彫りにしたクルマの大切さ

小沢コージ(以下、小沢):金子さん、あらため震災でクルマの存在感の大きさが明らかになっちゃいましたね。俺たちが前々から指摘してた通り。

金子浩久(以下、金子):流されるクルマを見て、津波の力の強大さだけでなく、地方の交通がクルマに依存していることが思い知らされた。亡くなられた方と行方不明者が2万人以上で、被災したクルマは14万台超。

小沢:クルマ離れなんて嘘マグニチュード9、いや9.5! 映像がそのものが証人ですよ。プールの浮き輪の様にクルマが浮かんでたし、実際、被災後は田んぼのかかしみたいに被災“車”が散らばってる結局、クルマ離れなんて言ってるのは都会の木っ端役人っていうか、現実を知らない高学歴者ばっかなんですよ。地方じゃマイカーなしではいられないし、俺は「アナタ、停留所でバス1時間待ったことありますか?」って言いたい。今後出てくる民主党の交通基本法※もあり得ない。無駄に金かかるだけ。

金子:まだ行方不明者の捜索は続いているけど、その次には復興しなければならない。

小沢:それこそクルマなしではありえないでしょ。物資運びしかり、建設機器しかり、医者や負傷者の移動しかり、通勤通学だってクルマなしではありえない。

金子:その現実は、小沢だって被災地で送迎ボランティアしたからわかるでしょ?

移動式BookOffよ、パーツを買い取れ!

小沢:そもそも先輩ジャーナリストの清水和夫さんが始めた活動ですけど、先週末も宮城県の亘理町に行って驚きましたね。避難所の亘理小学校にプリウスで行ったんですけど、クルマなしだとたかが薬取りに行くのに片道3時間かかるんですって。それが俺が行くと30分。もちろんタクシー使えば行けますけど、一往復5〜6000円って被災者にはありえない金額。

金子:俺も岩手と宮城に行った。新車で買って3ヶ月しか経っていないBMW120iを津波で流されて廃車にせざるを得なかった人と話したけれど、クルマがないと生活が立ち行かなくなると言っていた。今は、職場の仲間や近所の人たちのクルマに乗せてもらって急場をしのいでいるけれど、早急に次のクルマを買おうとしていた。地方に取材に行くと必ず聞かされるのが、「この辺は、クルマがないと生活できませんから」という決まり文句。

小沢:クルマ離れどころかますますクルマ、ですよね。

金子:じゃあ、今ほどクルマが行き渡っていなかった30年前はどうしていたかというと、これも決まり文句で「クルマを持っていなくても、生活できた。町内で、すべての用事が事足りていた。隣町や大きな町に行く時は、バスに乗っていた」そうだ。過疎が進んでコミュニティが崩壊し、シャッター通り商店街化が進んで、みんなクルマで全国一緒の大型店で買い物するようになっちゃった。東北に限らず、地方が抱える構造的な問題点が、クルマを媒介にして浮き彫りにされていた。

小沢:いま、某中古車ネットがメチャクチャ中古の軽を買い漁ってるらしいですよね。今後高く売れるの間違いなしだからって。ほとんど株と同じ。

金子:女川町で、日産シルビアのタイヤとホイールを外そうとしていた若者がいたんだ。話しかけてみると、「津波で海水に浸かっちゃったから、このシルビアはもう直せない。悔しいけど諦めます。でも、復興して落ち着いたら、絶対に、もう一回シルビアを買って乗りますよ。だから、その時のために、まだ履けるタイヤとホイールを外しているんです」って。クルマ好きの、素直で明るい、いい若者だった。もらい泣きしながら、まだ使えるカーナビやステアリングホイールを外すのを手伝ったよ。

小沢:まだ、使えるパーツを取り外している人は、僕も見ました。だから、いま必要なのは移動式ブックオフっていうか、中古パーツ買い取りチェーンだろうな。そうやって使えるパーツ、使えるボディを出来るだけ高値で買い取ってあげれば被災者は喜ぶ。それから移動式メカニック。「水没カー動かせます!」なんて看板作って現地入りしたら、絶対に役立てる。

金子:それは現実難しいけどね。エンジンに海水入ってマトモに動くのは。大洗で日産の新車デポがかなりイッてたけど、凄かったもん。だから現実使えるのはタイヤホイール、新車に近ければ、ステアリングホイールやカーナビやオーディオぐらい。でも、使えるパーツを取り外せるクルマは幸運だったとしか言えない。丸められた紙クズみたいに、僕らが見ても元の車種が何であったかわからないくらいクシャクシャにツブれているクルマの方が圧倒的に多かった。

ヤバ過ぎる時限爆弾? 東北産パーツ

小沢:それから予想外にヤバかったのは東北産パーツですよね。既にトヨタが18日から全工場で生産再開、ホンダも11日から稼働半分ぐらいで再開って発表しましたが、アレってまさしく自動車サブプライムだと思うんですよ。今後、数ヶ月、いやヘタすると1年ぐらい長引くかも。

金子:そうかもしれないなぁ。これからも意外なところが「ライン中止」とか「供給不足」ってなってもおかしく無い。実際、3月に北米のGM、フォード工場まで操業停止までしたけど、アレって日立のエアフローセンサーの供給不足なんだよね。実は世界シェアの6割を握ってて、東北パーツは意外なほどの世界自動車産業のアキレス腱になってる。

小沢:誇らしいようなツライような話ですよね。逆に今後、海外メーカーがリスクマネージメントと称して、東北メーカーにパーツを発注しないことは十分あり得る。

金子:だから俺たちのやることのもう一つのボランティアは、東北パーツが大丈夫だって海外試乗会のたんびに言うことだよ。もうがんばってるし、これは100年、いや1000年に1度の出来事だって。

小沢:言えてます。自動車ジャーナリストもやれること沢山ありますよね。
(次回に続く……)

vividcarブログ

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