【編集部的映画批評】そこにいるけど、そこにいない。異空間の会話


 「私たちにも、できることがきっとある」というTシャツを着て、東北太平洋大地震の義援金のチャリティーに力を入れた第3回沖縄国際映画祭。いろいろな舞台挨拶が中止になったり、公開自体が延期になった映画もあったり、映画業界が沈んだ状態の時に、思いきった決断で実施に踏み切り、さらに募金活動で1,800万円も集めたのはすごいものだ。さて、吾輩は、沖縄まで取材に行くことができなかったが、オープニングをかざった『漫才ギャング』は観た。今回はこれについての批評をするとしよう。

『漫才ギャング』

 初監督作『ドロップ』で大ヒットを飛ばした品川ヒロシが再び自身の小説を映像化。芸歴10年、売れない芸人の黒沢飛夫は、拘留所でドレット頭に刺青を入れた不良・鬼塚龍平に出会う。そこで龍平のツッコミの才能を見出した飛夫は、コンビ結成を決意し……。主演は佐藤隆太と上地雄輔。喧嘩や笑いでぶつかり合う、品川ならではの熱き友情物語だ。

“異空間独り言”の手法が個人的にツボ

映画予告の動画でも紹介されている飛夫と龍平の出会いのシーン。飛夫が留置所で屁をすると、龍平がそれに対してツッコミを入れる。テンポの良いツッコミが観ているものを笑いに誘う。そんな掛け合いのスムーズさは、演じている佐藤隆太と上地雄輔の腕が成す技の素晴らしさと言ったところか。しかし、吾輩が注目しているのは、その先である。龍平が突っ込んだ後に、飛夫の「こいつツッコンだよ!」という心の声。「ボケ→ツッコミ→ツッコミ」と、ツッコミにさらに補足ツッコミを入れている。これがさらなるテンポを作りだして観客を引き込んでいるのではないだろうか。そして、“異空間独り言”。よく演劇等で、舞台上に人物が複数人いるのに、話している人の声は“独り言”の台詞なので、まるで別の空間で話しているかのように、他の人には聞こえていないという設定手法。『TRICK』で上田の傲慢さに対して山田が独り言を話す時にも使われているが、この映画でも飛夫が龍平のツッコミに対して驚きの声をあげる場面などで使われている。心の底を表現した声と目の前にいるのに気付いてない周り、その感情の格差を想像すると思わずほくそ笑んでしまう。なお、“異空間独り言”という言葉は、勝手に吾輩がつくった造語。本当にそういう名前の手法があるわけではないので悪しからず。

石原さとみ、男子はキュンで女子はブー!

飛夫の恋人・宮崎由美子役で石原さとみが出演しているのだが、これがかわい過ぎる。容姿については、あえて述べる必要はないだろう。この由美子、何がかわいいかと言うと、性格が本当に素敵過ぎる。手をつないで歩くという他愛もない行為で笑顔になり、恋人と結婚したいがために妊娠を願い、果ては恋人の友人の借金を返すために自分の貯金を切り崩す…恋人に対して途方もなく柔順な性格の女性なのだ。こんな女性が目の前にいたらどんな男性でも好きになってしまうだろう。しかし、男性にとっては“理想型”ではあるが、女性目線から見るとブーイングが。映画を観た女性にこのキャラクターについて聞いてみたところ「ありえな〜い。あんなに忠実な女なんて、いない!いない!」と文句を並べられた。あまりにも完璧過ぎることで女性からは敵視されてしまったようだ。由美子は、吉本芸人たちが理想と思っている女性をイメージしてつくられたそうだが、長く苦しい下積み生活を送った彼等にとっては「自分の全てを受け止めて支えてくれる女性」に心を動かされてしまうのだろうか。

着うたには激しすぎるが、テンション上がる

主題歌として使われているのはSuperflyの「Beep!!」という曲。アップテンポでSuperflyらしい王道ロックなナンバーである。この曲は本当にテンションが上がる。サビの部分のシャウトが、突き進む青春の熱い気持ちを思い出させ、夢に向かって走るこの映画にぴったりである。映画を観た後にあまりにも気に入ってしまい、約1年ぶりに着うたをダウンロード、この曲を携帯電話の着信音にしてしまった。普段気持ちが沈んだ時に、イヤホンで聴くと元気が出る。しかし、あまりに激しいので、着信して音が鳴った時に「びくっ!」としてしまうのがたまに傷。目覚まし時計としての効果は抜群だ。

 全体的な評価をまとめると、役者の演技も良かったが、品川ヒロシの手腕が特に光っていた。漫才シーンは、本職ということもあり、よくまとまっている。それに喧嘩シーンのアクションも好きこそものの上手なれ。巧みであった。しかし、まだまだ才能を隠しているような気がするので、次ののびしろを期待して星3つ。次回作も驚かせてくれるような作品であって欲しい。ちなみに彼女と親密になれる度が2つ星なのは、決してデートに向かないというわけでない。上記の石原さとみ演じる彼女と見比べて喧嘩しないようにということで。

ヒーロー妄想のカンタの所見評価

さすがは品川ヒロシ度:★★★

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