インタビュー:小飼弾「多元宇宙論を信じているタイプ」


『24』『LOST』を超えた!? と話題の海外ドラマ『フラッシュフォワード』。全世界の人々が一斉に意識を失い、その間の2分17秒に未来の自分を見る“フラッシュフォワード(未来視)”を体験するという、これまで描かれたことのない衝撃的な内容と、FBIの捜査チームが全世界を同時に意識喪失させたブラックアウト事件を追うスリリングで骨太なストーリーが、世界中を魅了している。

今回、『フラッシュフォワード』がどれだけ面白いのか、どれだけ興味深いのかを探るため、書評を主なコンテンツとするブログ「404 Blog Not Found」の書き手として知られる日本屈指のアルファブロガー、小飼弾さんに話を聞いた(3月8日取材)。女子座談会ではもしも自分だったらどうするのか……という人間ドラマ、人間関係で盛り上がったが、1日に10冊の本を読むSF好きの小飼さんから見たこのドラマの面白さは?

──今までに描かれたことのないストーリーはもちろん、第1話のスケールの大きさが話題になっていますが、ご覧になった感想は?

小飼弾(以下、小飼):いい出だしでしたね。2分17秒、全人類の意識が未来へ行ってしまうという設定は、目の付けどころがいいですよね。僕はもともと原作者のロバート・J・ソウヤーが好きで、彼のSF小説「ネアンデルタール・パララックス三部作」とかを読んでいたんです。でも、この『フラッシュフォワード』は読んでいなくて。このドラマを機に原作も読んでみました。

──原作を読まれたうえで、ドラマとしての面白さはどこにあると思いますか?

小飼:原作は、あの現象(フラッシュフォワード/未来視)がなぜ起きたのか? という点がメインで描かれているんです。どちらも群像劇なので「主人公」はいないのですが、あえて選ぶと、原作では物理学者のロイド、ドラマではFBI捜査官のマークという大きな違いはあります。でも、ドラマとしてFBIをメインにしたのは上手いやり方だなと。というのは、法の執行者は自分が知らないことにも首を突っ込む必要があるので、FBIにすることでどんなところにも入って行けることになりますからね。全体的なお話としては、ドラマの方がよくできていると思います。分かりやすいこともさることながら、なぜフラッシュフォワードという現象が起きるのか、完全に解明されていなくても話が成立していく。謎は謎として、こういう現象が起きたのだから、「じゃあ、どうする?」というところですね。

──小飼さん自身はフラッシュフォワードは実際に起こりうる現象だと思いますか?

小飼:実際には難しいでしょうね。体はその場で意識だけ飛ばしている──それがどういう原理なのか理解したくて原作を読んだんですけど、結局分からなかったんですよね。

──では、ドラマのように半年後の自分の未来を見られるとしたら、見てみたいですか?

小飼:僕は多元宇宙論(Multiverse)を信じているタイプなので、見たうえで未来を変えちゃうでしょうね。未来を変えられると信じているというよりも、未来を変えられないという証明が今のところされていないので、変えられると思っているんです。実際、過去を見るということは物理現象としてあるわけで、100光年先の星は100年前を見ているわけですからね。だから未来も……って思っています。

──なるほど。SF好きということは、タイムマシンにも興味ありますか?

小飼:タイムマシンものをドラマにするのは難しいんですよね。過去に戻るとタイムパラドックス(時間の逆説)の問題が必ず出てくるので、それをどう片づけるのかというのが難しいんです。そういう意味では『フラッシュフォワード』は及第点。あと、ネットがなければモザイク(※)はできなかったわけで。そういったネットの描き方が大きく間違っていないというのも好感が持てますね。

──ドラマのなかでモザイクは事件解明の手がかりとなる重要なツールですからね。SF映画も観ますか?

小飼:映画ではSFは確立されたジャンルなので、SFが付く作品はつい観てしまいますね。最近で言うと『アバター』とか。3Dで見ましたが、あれだけ画面の奥行きがあるのにストーリーの奥行きはないという、そのコントラストがすごかった(笑)。

──確かに(笑)。でも、ああいう3D作品の場合は、物語の設定を難しくすると映像に集中できないというのも一理ありますよね。

小飼:それは僕も思いました。ストーリーをややこしくしたら頭を抱えて劇場をあとにすることになるでしょうからね。やはり、あれくらい単純にした方がいいのかもしれない。それに比べると『フラッシュフォワード』はややこしい話ではあるんだけれど、長編ドラマとして全エピソードを見ると話がちゃんとつながるんです。それはいいですね。

──知識が豊富だと細かい設定もチェックしてしまうんですね。

小飼:そうですね(苦笑)。たとえば、原作が出版されたのは1999年なので携帯電話はほとんど出てこないんです。出てきたとしても今のようにメールができるタイプの携帯ではなくて。でも、ドラマは現代の設定なので、もちろん携帯電話は重要なツールとして登場する。で、ラストのエピソードでディミトリに言いたいことが1つあるんですよね。アレが消えてしまう前に、どうしてケータイのカメラで写メらなかったのかって。原作の時代設定では写メは撮れないけれど現代は可能。あのシーンはつい「写メっとけよ!」って叫びたくなりました(笑)。でも、ディミトリは主人公に次ぐ重要キャラ。未来を見なかったという彼の存在がこのドラマの重要なキーにもなっていて、演じている役者(ジョン・チョー)の演技もイチオシですね。

※ウェブサイトを使って70億人のヴィジョン(未来視)を集める捜査。

■関連リンク
『フラッシュフォワード』公式サイト
『フラッシュフォワード』特集
404 Blog Not Found

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