短期連載 世界基準の仕事術 vol.3【インタビュー:シーバス・リーガル マスターブレンダー コリン・スコット】


1909年にスコットランドで誕生し、100年以上も世界中で飲まれ続けているプレミアムウイスキー「シーバス・リーガル」。そして「常に最高の品質を提供する」という伝統の精神を受け継ぎ、膨大な原酒の中から熟成具合を嗅ぎ分ける、シーバス・リーガルのマスターブレンダー、コリン・スコット氏。時代が変わっても最高の味わいを生み出すそのブレンディング技術は、まさに世界基準の「芸術品」と呼ぶに相応しい技なのだ。

短期連載「世界基準の仕事術」の最終回は、コリン・スコット氏に伝統と歴史を守るウイスキー作りについて聞いてみた。

――世界中で愛されるブレンデッドウイスキー「シーバス・リーガル」。まずはシーバス・リーガルの持つもっとも特徴的な点を教えていただけますでしょうか?

コリン・スコット(以下、コリン):シーバス・リーガルのもっともわかりやすいポイントは「ブレンデッドウイスキー」であるということです。モルトウイスキーとグレンウイスキーをブレンドしたウイスキー、ということですね。
もうひとつは、スコットランドのスペイサイド地方でもっとも歴史のある「ストラスアイラ蒸留所」で生み出されるモルトを使っているという点もシーバス・リーガルのアイデンティティでとても重要なところです。

――味わいの特徴としてはどういった点が挙げられますか?

コリン:特徴としてはフルボディ(重厚)かつフルーティな点でしょう。スペイサイド地方で生産されるモルトウイスキーは、一般的にフローラル、フルーティ、ナッティ、そしてスパイシーであると言われています。「スパイシー」というのは、とうがらしのような風味ではなく、シナモン、ハーブに近いニュアンスですね。たとえばスペイサイドモルトの対極に位置するアイラモルトは、スモーキーでピートの泥臭さといった香りの特徴を持っています。

――今回、日本でアワードが行われて大々的に取り上げられた「シーバス・リーガル18年」の特徴をお聞きしてもよろしいでしょうか?

コリン:シーバス・リーガル18年の特徴は、スムースさ、つまりは飲みやすさです。そしてフルーティであること。具体的にはサルタナレーズンの香り、さらにはデザートのフルーツケーキのような甘美な香りも持っています。さらにベルベットのようななめらかさ、ラグジュアリーさも感じられるウイスキーであることも特徴のひとつですね。

――とくに日本にはシーバス・リーガル18年のファンが多いと聞いたのですが、日本人に好まれる理由はどこにあると思いますか?

コリン:それは、私が日本人好みのスペシャルブレンドをしているからでしょう(笑)というのは冗談ですが、ひとつは、日本国内でのローンチが世界的にもとても早い段階で行われたことが挙げられるかと思います。1997年に日本ではリリースされたこともあって、他国に比べてシーバス・リーガル18年の存在を強く認識してくれているのでしょう。

――シーバス・リーガルの商品には明確なエイジングがありますが、それぞれどのような性格分けがされているのですか?

コリン:いま、シーバス・リーガルが日本で展開しているのは12年、18年、25年です。実はこの表記こそがとても重要な意味を持っています。これはイギリスの法律が関係しているのですが、たとえば12年と表記されるものは、“12年以上の”樽熟成をしている原酒を使わなければいけないという明確な決まりがあるのです。

――わかりやすく12年、18年、25年を表現していただけますか?

コリン:シーバス・リーガル全体の特徴で言えば「フルーティ」であることが挙げられます。12年は林檎、洋梨のような香り、18年はドライフルーツ、レーズンの香り、そして25年はピーチ、オレンジといった芳醇な香りが特徴です。それぞれ熟成年が違うのではなく、ブレンドしているウイスキーがまったく違うものなので、それぞれのキャラクターがまったく違うものとなっています。

――では、もっともウイスキーの香りを楽しめる一番いい飲み方を教えてください。
コリン:これはとても良く聞かれる質問ですね(笑)みなさんはマスターブレンダーがどのような飲み方をしているのか興味があるんですね。香りを楽しみたいのであれば、ストレートではなく水を少し加えると、アルコールとアロマがふわっと立ち上ってきます。

私の場合は水とウイスキーを1対1の割合で割っています。ストレートだと、やはりどおしてもアルコールが強いので、啜って飲むことになってしまうので、舌のほんの一部だけで香りや味を感じなければならないのですが、水を加えることでアロマやフレーバーが口の中に広がるので、香りを楽しむには水で割ったスタイルがいいかと思います。

日本は湿気があってスコットランドよりも温かいですから、氷を入れて飲む人も大勢いますが、それはどちらでもいいと思います。本当に自由に楽しいんでもらえばいいと考えています。。

――スタイルにこだわらなくても問題ないということですね?

コリン:ウイスキーにはたくさんの飲み方がありますから。どんな飲み方であってもウイスキーであることは変わりないし、ソーダや水を加えることで、新しいフレーバーが生まれる可能性もありますから。今、日本で流行している“ハイボール”もそうでしょう。どんなスタイルであれ、シーバスを飲んでもらえるということが大切なことだと思います。


◆短期連載「スペシャルトーク&インタビュー 世界基準の仕事術」◆

(1月26日 配信)
■vol.1「仕事で“ワクワク”できるか
三木谷浩史(楽天株式会社 代表取締役会長兼社長)
星野佳路(株式会社星野リゾート 代表取締役社長)
村上龍(作家)

(1月27日 配信)
■Vol.2「アジアで売るためのブランディング
シーバスブラザーズ社 
インターナショナル・リージョナル・マネージャー
ジェームス・マックスウェル

(1月28日 配信予定)
■Vol.3「伝統を守ることが私の使命
シーバス・リーガル
マスターブレンダー
コリン・スコット

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