短期連載 世界基準の仕事術 vol.2 【インタビュー:シーバス・ブラザーズ社 インターナショナル・リージョナル・マネージャー ジェームス・マックスウェル】


「シーバス・リーガル」、「バランタイン」といったプレミアムスコッチから、「ディタ」や「マリブ」などのリキュール類にまで及ぶ多種多様な酒類を取り扱い、ワイン・スピリッツ部門では世界第一位の企業グループを形成するペルノ・リカール。短期連載の2回目はペルノ・リカールグループの1つシーバスブラザーズ社のアジア・環太平洋地域のインターナショナル・リージョナル・マネージャー、ジェームス・マックスウェル氏を迎え、成長著しいアジア市場、さらにはシーバスリーガルというプレミアムスコッチをリリースするセールスプロモーションについて伺った。

――まずお伺いしたいのは、いま日本で流行している“ハイボール”という飲み方についてです。何十年か前に大流行したスタイルがここ数年でリバイバルという形で再びブームになっています。これはペルノ・リカール社の扱う「プレミアムスコッチ」とは対照的なブームかと思いますが、まずはそのあたりをどのようにお考えかをお聞かせください?

ジェームス・マックスウェル(以下、ジェームス):われわれは世界中でお酒を扱ったビジネスを展開しています。ですから、どの国でも、地域でも、それぞれの食文化、酒文化があり、ウイスキーの飲み方ひとつ取ってもたくさんあるということを十分理解しているつもりです。ここ数年で、日本では某メーカーの戦略によって「ハイボール」という飲み方がブームになっていることも十分に理解していますし、当然ながら、それを否定するようなこともありません。

――では、日本のハイボール文化を踏まえた上で、これからの日本マーケットへの戦略をお教えください。

ジェームス:我々の見解としては、同じウイスキーではあるけれど「ハイボールブーム」というのは、どちらかというとスタンダードなクラス内でのブームであると捉えています。もちろん、ハイボールを商品として直接プッシュすることはありませんが、いままでウイスキーに触れていなかった若い人たちがハイボールを口にすることでウイスキーへの扉を開き、やがてはシーバス・リーガルを口にしてくれるお客さんになってくれると嬉しいなと考えています。

――リーチするターゲットが明確に設定されているということですね。

ジェームス:その通りです。具体的にお話をさせていただくと、シーバス・リーガルは30〜40代の方に飲まれることを想定しています。理由としては、プレステージなもの、ハイクオリティなものを求める世代にマッチした商品展開をしているからです。本来のウイスキーの楽しみ方である、フレーバー、アロマ、キャラクターを楽しむということをアピールしていきたいですね。

――30代〜40代としっかりと年齢設定されていることを伺うと、ビジネス的な視点からも何か明確なビジョンがあるように感じますが?

ジェームス:正直なところをお話すると、現在のコアドリンカーは世界でも日本国内でも50代以上という年齢構成で、かなり年齢層の高いお客さんが多いのが事実なのです。もちろんブランドを支えていただいている大事なお客さんではあるのですが、もっと若い世代の獲得を目指したいというところが本音です。日本国内のお話も先ほどさせていただいたように、ハイボールブームで若い世代がウイスキーに興味を示したことをきっかけに、30代〜40代のお客さんの獲得を目指していきたいと考えています。

――ペルノ・リカール社にとって、アジアというのはどのような存在意義を持つマーケットなのでしょうか?

ジェームス:シーバス・リーガルにとって重要なことは、エイジステートメントのブランディングです。つまりシーバス・リーガルの商品である「12年」「18年」「25年」というブランド付けをしっかりと確立するということです。
私がアジアマーケットを担当していて幸運だなと感じるのは、アジア市場というのは、欧米市場と違って、プレミアムウイスキーがもっとも売れるマーケットであるということです。北アメリカ、ヨーロッパというのは、実はスタンダードクラスウイスキーがメインのマーケットなので、その明確な違いは売り手としてはありがたいところです。


――シーバス・リーガルブランドですと、どの商品が売れますか?

ジェームス:18年がとても好調ですね。まだシーバス18年というのは、そこまで大きなブランドではなく、全世界で20万ケースぐらいしか売れません。しかし、アジアではとても期待されていますし、ベトナムや中国で売れています。特にベトナムは人口が少ない割りに、プレミアムなものが売れている国ですので、とても期待しています。

――なぜ、これほどまでにアジアで受け入れられるのだとお考えですか?

ジェームス:私個人の見解ですが、アジアの国々では「他人と違うものを求める」といった思考を持つ方が多く、ラグジュアリーなものを求める傾向があるように感じます。こういった思考の中で、さらに消費者が洗練されていくことで、すごく好調なビジネスが展開できると思います。

――アジアマーケットの中でも、いまや中国やインドが大きなマーケットだと思うのですが、そういった新興国への施策を、お話できる範囲で伺えますでしょうか?

ジェームス:アジアマーケットについてはっきり言えるのは、世界中のキーストラテジーであることは間違いないということです。特に中国市場というのは、いまや世界中で一番シーバス・リーガルを売り上げている国ですし、ダブルディジット(2桁成長)も注目すべきところでしょう。さらに飲まれている方の年齢も若く、業種の構成もとても幅広いので、これからはラグジュアリーな18年や25年といったものが人気がでる可能性もさらに上がっていくのかと思われます。

――同じ新興国のインド市場に関してはそのような施策をされていますでしょうか?

ジェームス:インドという国は、インドウイスキーというものがあって、ウイスキーマケットとしては世界でもっとも大きいところなのです。しかし、インドは輸入関税率がとても高いので、海外ウイスキーとしてはとても厳しい市場なのです。もし関税率の問題が解消すれば、間違いなく大きなマーケットに成長するはずです。

――ちなみにアジアだけでなく世界的に見て日本マーケットに魅力はまだ残っていますか?

ジェームス:マーケットとしての日本のお話をさせていただくと、約30年ほど前のバブル時代に、スーパープレミアムウイスキーが大ブームになりました。そこで、アジアに風穴を開けてくれたのが日本だったのです。当時の出荷数ですが、最大で1989年の370万ケースという記録が残っています。直近の2009年のデータは80万ケースでしたから、今の約5倍ですよね(笑)こういったプレミアムウイスキーのブームは、その後韓国に移り、いまは中国にあるといえるでしょう。

もうひとつ言いたいのは、日本のバーテンダーは、ものすごくレベルが高いということです。ウイスキーだけのことでもなく、食文化全体、酒文化全般についての知識が豊富で、さらに知りたがる人が多いという印象ですよね。これは日本の特徴なのかもしれません。またロックグラスに入れる氷を削って芸術品のように仕上げる技術も目を見張るものがあります。そういった現場レベルで支えられている日本マーケットの魅力は高いと思っています。

――最後にライブドアのユーザーに一言お願いします
ジェームス:今、このインタビューを読んでいただいているビジネスパーソンの方々は、これから仕事やプライベートをより充実させたいと考えていることでしょう。私たちシーバス・リーガルは、毎日の生活を豊かにと願うみなさんのライフパートナーとなるよう、最高の1杯を持ってお待ちしています。


◆短期連載「スペシャルトーク&インタビュー 世界基準の仕事術」◆

((1月26日 配信)
■vol.1「仕事で“ワクワク”できるか
三木谷浩史(楽天株式会社 代表取締役会長兼社長)
星野佳路(株式会社星野リゾート 代表取締役社長)
村上龍(作家)

(1月27日 配信)
■Vol.2「アジアで売るためのブランディング
シーバス・ブラザーズ社 
インターナショナル・リージョナル・マネージャー
ジェームス・マックスウェル

(1月28日 配信)
■Vol.3「伝統を守ることが私の使命
シーバス・リーガル
マスターブレンダー
コリン・スコット

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