感動こそが原点だ!「細江英公・人間ロダン」は会場をもアートにする【新-写真空間】


写真家 細江英公氏がオーギュスト・ロダンの彫刻を中心に撮影した作品シリーズの世界初となる写真展「細江英公・人間ロダン展」がリコーフォトギャラリー RING CUBEで開催されている。「人間ロダン展」では、ロダン作品を彫刻としてではなく、人間の肉体として撮影した作品で、これまでの彫刻として撮影された写真とは一線を画すシリーズとなっている。

プリントに和紙を使用し、蛇腹状の「画帖」「掛け軸」「四曲屏風」に仕立てられた作品は、大きな存在感と独創性を観る者に発している。またRING CUBEの円形という特殊な空間を活かした展示は、新しい写真という技術と江戸時代からある和紙や表具の技術を見事なまでに調和させており、世界でも高い評価をうけている作品会場をもアート作品にまで昇華する細江氏の世界を実体験できる。

細江氏に今回の「人間ロダン展」について伺った。

■感動です! それがすべて始まり
オーギュスト・ロダンの彫刻作品の写真を撮り始めた動機を伺ったところ

「感動です」と力強い第一声を頂いた。

細江氏は、今まで何回もロダン庭園美術館に訪れているが写真を撮ることはなかった。しかし一昨年、パリに渡航した際に撮影したい衝動にかられた。その時、細江氏は、リコーの小型デジカメ「GR DIGITAL」が体の一部になっており、その感覚でロダンの作品を見直したとき、今までにない感動につき動かされてロダン作品を人間として撮ったそうだ。

■ロダン美術館をも動かした細江氏の感動
細江氏は、撮影のためロダン美術館にも撮影を申し込み、ロダンの彫刻を人としての視点で撮影した作品を見せたところ、大いに感動してもらったという。

細江氏は、彫刻ではなく人間として撮るということは、アングルも構図も写真の撮り方がまったく変わるという。こうした細江氏の感動は、ロダン美術館の人々をも動かした。写真の展示のため、ロダンのデッサンをいれたいとロダン美術館に申し出たところ、美術館の資料データでるフィルムを貸してくれた。「ロダンに対して、自分が持った感動は、美術館の人たちと同じだと感じた」という。

細江氏は、「『人間ロダン展』は、感動をあたえてくれた、ロダンへのお返しです。」とすがすがしい笑顔で語った。

■「画帖」にみるモダンと古風の「巧み」が会場すらアートにする
今回の展示で会場をもアートにした特徴が、「画帖」「掛け軸」「四曲屏風」といった和の巧みだ。現代の技術である写真と、日本の伝統的技術である巧みが高い次元で調和しているところが「人間ロダン展」をはじめとする細江氏の作品展のすばらしいところだろう。

そのなかでも「画帖」は、和紙にプリントした写真を1枚でなく、蛇腹状につなげた絵巻のような作品だ。

彫刻は並べることはできないが、この画帖は写真を並べることにより、孤立せずに作品を表現できる優れた写真(2次元)の技法だと細江氏は語る。

さらに円形の展示空間を持つRING CUBEだからこそ画帖の組み合わせの調和も優れていたものとなったという。

展示会場には、赤・青・白のさりげないトリコロールカラーに彩られたエントランスの「四曲屏風」、「画帖」の壁面には「掛け軸」の組み合わせは、モダンと古風が調和したアート空間だ。

「画帖」「掛け軸」「四曲屏風」などの高品質な作品を生み出せるのは、作品作りに情熱を持つ写真絵巻制作チームとも呼べる仲間たちの存在があるからだという。気持ちが一つになっている「巧み」たちがたぐいまれな緊張感が香る細江氏の作品を支えている。

【細江英公氏より一言】
私はロダンの「彫刻の写真」ではなくて「人間ロダン」を表現したいという、不遜かつ無謀な心意気から出発しました。これが尊敬するロダンへの敬愛の意思表示ではないか。いま、ロダン作品にカメラを向けることは、そのくらいの心意気がなければならないとパリ・東京の行き帰りにずっと心していたことです。

【細江英公氏プロフィール】
写真家、清里フォトアートミュージアム館長、東京工芸大学名誉教授。
1933年山形県米沢市生まれ。1960年『おとこと女』、1963年『薔薇刑』で評価を確立し、1969年『鎌鼬』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。その他の主な写真集に『抱擁』、『死の灰』、『胡蝶の夢 舞踏家・大野一雄』などがある。
1998年、紫綬褒章を受章。
2003年世界を代表する写真家7人のひとりとして英王立写真協会創立150周年特別記念メダル受章。2006年、写真界の世界的業績を顕彰するルーシー賞(米)の「先見的業績部門」を日本人として初受賞。2007年旭日小授章、2008年毎日芸術賞受賞。
2009年11月、イタリアのルッカ・デジタル・フォト・フェストでその年度のマスター写真家賞が贈られ、その記念展を15世紀に創建された貴族の館にて開催、フレスコ画5部屋の全長120メートルの壁面に「おとこと女」、「薔薇刑」、「鎌鼬」、「ガウディの宇宙」、「浮世絵うつし」などの写真絵巻が展覧された。2010年5月には、ニューヨークのザ・ナショナル・アーツ・クラブから生涯業績を称えてゴールドメダルが贈られた。これはアメリカ人以外の写真家ではメキシコのブラヴォ、ブラジルのサルガド、イギリスのデビッド・ベイリー等に次いで4人目。日本人の写真家では最初の受賞者。

細江英公・人間ロダン展
展示作品数:約60 点
期 間:2010年9月22日(水)〜2010年10月17日(日) ※休館日を除く

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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