iPhone、Androidの攻勢で減益へ!世界No1 Nokiaは巻き返せるのか?【世界のモバイル】


Nokiaの2010年度第2四半期(4月-6月)の決算が発表された。売り上げは前年同期比で若干の伸びを示したものの、純利益はダウン。特に端末部門は同マイナス約20%と大幅な下落となった。Nokiaによると次の第3四半期もこの苦しい状況が続く見込みであるという。スマートフォン市場でもiPhoneやAndroidの陰に隠れることが多くなってしまったNokia、状況打開の道はあるのだろうか?

決算報告書によれば今期のNokiaの端末出荷台数は1億1111万台。これは昨年同期の1億320万台、今年第1四半期の1億780万台よりも数を伸ばしている。Nokiaは売れていないのではなく、マーケットシェアも1位の座を引き続きキープしているのである。昨年同期比ではアメリカ市場以外では数を伸ばしており、販売そのものは実は好調だ。だが売れている製品の構成費や販売マージンの下落が利益の減少を引き起こしているのである。

Nokiaは安価なエントリーモデルから高価なハイエンドスマートフォンまで多数の製品ラインナップを用意している。このうちエントリーモデルは5000円以下程度のベーシックな製品で、新興国を中心に大量に出荷されている。端末1台あたりの利益は少ないものの、大量のボリュームを稼げることからトータルとして高い利益を得ている。一方スマートフォンはエントリーモデルほど数が出ないものの、価格が高いことから1台あたりの利益率は高い。数で稼げる製品はローマージン、販売価格で稼げる製品はハイマージンとすることでこれまでは利益を確実に確保してきたのである。

多数の製品ラインナップがNokiaのシェア1位を支えている


だがこの1年で市場の環境は大きく変わった。スマートフォンの販売数が急成長しており、特にAppleはiPhone人気で業界での存在感を確固たるものにしつつある。またGoogleのAndroid OSを搭載した端末も、今では大手メーカーだけではなく中小メーカーまでもが参入したことによりスマートフォンの普及を一気に高めることになった。一方Nokiaはスマートフォンの新製品の市場への投入ペースにブレーキがかかったままだ。この半年の間に話題となったスマートフォンは音楽機能を強化したNokia X6くらいではないだろうか。2-3年前はほぼ毎月のようにスマートフォンを投入していた同社の面影は影を潜めてしまっているのである。

今期のNokiaの全端末の平均価格は61ユーロで、これは昨年同期の64ユーロからわずか3ユーロ下落したにすぎない。だが四半期ごとに1億台もの端末を販売する同社にとっては、このわずかな下落の影響は少なくない。またコンバージドデバイス(スマートフォンとハイエンド携帯電話)の平均端末単価は143ユーロで、これは昨年同期の181ユーロより実に20%も下落しているのだ。これはメーカー同士のスマートフォンの販売競争や消費者がより低価格な製品を求めた結果でもある。だが原因はそれだけではなく、高価格で高マージンなハイエンドスマートフォン製品が同社の売れ筋製品に無い、ということではないだろうか。

Nokiaはフラッグシップモデルとして昨年冬にNokia N900の販売を開始した。だがロイターなどの報道によればN900の販売台数は5ヶ月間で10万台、1ヶ月あたり2万台にすぎなかったとのことである。この数字をどう評価すべきか判断は難しいかもしれないが、iPhoneが発売からわずか数日で100万台レベルの販売台数を記録していることや、Nokiaのこれまでのヒット製品と比べてもその数は「少ない」と判断するべきだろう。

このN900はNokiaが従来からスマートフォンに採用してたSymbian OSに変わり、LinuxベースのMaemoプラットフォームを採用している。今年2月に開催されたMobile World Congress 2010では、NokiaのMaemoとIntelがネットブック等向けに開発したMoblinプラットフォームを融合し、新しく「MeeGoプラットフォーム」とすることが発表された。だが発表から半年たってもNokiaからはMeeGo搭載のスマートフォンが出てきていない。すなわちこの半年間は、同社の「顔」となるべき製品が不在のままだったと言えるだろう。

期待した結果の出ていないNokia N900


一方、ハードウェアだけではなくソフトウェア、アプリケーションの対応もNokiaは後れを取っている。Nokiaは自社でOviブランドの各種サービスを提供しているが、業界のデファクトスタンダードとなったサービス、例えばEvernoteやUstreamへの対応が遅い。自社でサービスを拡充することよりも、ユーザーが実際に利用しているサービスを自社端末に対応させることが急務だろう。

iPhoneやAndroid、BlackBerryに対応しながらもSymbianには非対応といったサービス/アプリケーションも最近では珍しくないほどである。Nokiaが今後利益率を回復させ業界で再び脚光を浴びるためにはフラッグシップモデルの投入だけではなく、業界のトレンドサービスの取り込みが必須だ。そのためにはサービスの自前路線戦略の方向転換も必要となる場合もあるだろう。

山根康宏
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