現代は女性の時代か 境界線を越えていく女性たち【新-写真空間】


写真評論家 飯沢耕太郎氏が選ぶ、今、この時代 注目の女性写真家4名による作品展が開催された。

高画質なデジタルカメラの普及も手伝って、今や写真を学ぶ学生は女性が多数を占めるようになっている。また、一般の写真愛好者の中でもカメラ女子とよばれるデジタル一眼やフィルム一眼レフを持ち歩く女性を街中でも多く見かけるようになった。

こうした背景を物語るように、新人作家の登用門というべきコンペや写真賞では女性写真家が受賞する割合が圧倒的に増えてきている。デジタル時代となった現在、写真撮影やプリントのメカニズムといった女性がアレルギーを感じやすいハードル下がったことで、写真世界への女性進出を加速させているといってもいいだろう。

今回の「message -飯沢耕太郎の注目する女性写真家」では、女性の社会進出と活発な活動を背景に、独自の視点から個性豊かな作品を生み出し続けている女性写真家のパワーを実体験できる。

■現代は、女性のほうがパワーある
今は、女性の時代と語る飯沢耕太郎氏

飯沢耕太郎氏は4人を選ぶのに悩まなかったという。それだけ4人の個性の違いが傑出していたということだ。それは、会場で実際に写真を見てもらえば、誰しも納得できるだろう。

今回の展示に対して、細かい要望はださず、好きに作品を選ばせたという。それは、彼女たちのキャリア、実力を認めている証しでもある。飯沢氏の予想通り、4人の個性は大きく異なるにもかかわらず、実にうまくバランスがとれた展示となっている。

飯沢氏は、「今の時代は、閉塞感もあり、元気の無い時代。しかし、こんな時代こそ、女性が力をだせる。」と語る。社会が発達しルールや理屈を縛られる男性を横目に、セーフティラインや常識を躊躇無く超えていく女性の生命力や力強さが大きなパワーをだせるのだという。

■うつ ゆみこ

うつ ゆみこさんの作品は、ちょっと不思議な世界だ。イカや貝、植物、昆虫と無機物が組み合わされた不思議な生き物たちが写真の中に住んでいる。神様が生き物を生み出すように、うつ ゆみこさんは、八百万の神のような生き物を写真の中に生み出して続けている。
ハイクオリティ不思議な世界がリアリティを持つ

こうしたオブジェ写真は、チープになりがちだが、うつ ゆみこさんの世界がすごいのは、圧倒的なクオリティで観る者を納得させる力強さだ。
摩訶不思議なワールドに包まれる

■野村 恵子

フィルムから初めて、現在でもフィルムのほうが好きという野村 恵子さんは、重く力強いインパクトのあるカラーが目に焼き付く作品をとり続けている。
「フィルムは、フィルム、フィルター、カメラ、レンズ、印画紙など、制約(特性)のあるものを選択していく過程で色や自分がだせることが好きだ」という。また、「あとからどのようにも変えられるデジタルのほうが、自分をだすことが難しいかもしれない」とも語る。

最近はデジタルも使うそうだが、デジタルで撮影する場合は、主に撮影後のレタッチで自分の写真のイメージに近づけているという。しかし、撮影段階で仕上がりの色をイメージして撮ることはデジタルでも変わらないという。
重厚で深みのあるカラーが圧倒的だ

今回は、カラーとモノクロを同時に展示しているが、最近試みているという。カラーとモノクロを交互に観ることで両方の個性を活かせるのだが、まだカラーのほうが強いという。「もっとモノクロをインパクトがあって強いものにしないと」と野村さんは語る。これでモノクロのインパクトがアップしたら、新しい何かが生まれそうだ。
モノクロのような深みがある鮮やかなカラー作品たち

■宮下 マキ

宮下 マキさんの今回のテーマは「産む人」そう妊婦さんだ。宮下さんは、妊婦を100人撮る予定なのだそうだ。
これまでは、一人を100枚撮る手法をとってきたが、今回は、100人というバリエーションに取り組んでいる。

妊婦をテーマにしたのは、「妊婦は女性でもなく母親でもない存在、その中に、ゆらぎやバリエーションがあることに興味を持った」と語る。
宮下さんは、撮影とインタビューを通して、曲線の美しさと力強さ、それでいて不安も潜んでいる妊婦の奥にあるものを追いかけているようだ。撮影では、自分の部屋、家族と一緒に撮影している。このほうが、自然な力強さや曲線を写せるそうだ。現在までに撮影したのは、まだ20人。宮下さんの答えは、まだ見えてはいないという。
妊婦は女性でもなく母親でもない存在

女性を撮り続けている理由を「世界への好奇心が原動力。女性は、一生変身していくものだから」と、語る宮下さん。女性である自身の変化とともに、男性では見えない女性の深淵を写真で見せてくれそうだ。
曲線を撮りたい。女性は一生変身してくもの。

■藤岡 亜弥

藤岡 亜弥さんは、ニューヨーク在住。今回のテーマは、「Life studies on the Street」。


message -飯沢耕太郎の注目する女性写真家

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

【新-写真空間】の記事をもっと見る
はじける色彩とパッション!日本人の知らないタイがここにある

共有する

関連記事

【ケータイラボ】大人の女性に向けたケータイ「ベネトンコラボレーションモデル」

「ベネトンコラボレーションモデル」は、シンプルな形状と機能にこだわったストレートタイプの音声端末「nico.」をベースにした、ベネトン ジャパンとのコラボモデル。発売時期は2月下旬予定。価格はオープンプライスだが、ウィルコム…

【デジカメ調査室】買うならどっち?初めてのデジタル一眼

昨年9月に発売されたCanonのEOS Kiss Digital Xと、同年12月に発売されたNikonのD40と、現在人気の2台のエントリーモデルを比較してみた。キヤノンのEOS Kiss Digital Xは、デジタル一眼レフブームの火付け役になったEOS Kiss Digital…

【ケータイラボ】20色のカラーバリエーション!ファッションケータイ「812SH」

「812SH」は、ファッション性を追求し、20色の豊富なカラーバリエーションを揃えた、PANTONE社とのコラボレーションモデル。発売時期は2月上旬以降を予定し、価格はオープンプライス。「812SH」は、世界的な色彩規格のリーディングカン…

【ケータイラボ】女性向けのエレガントなケータイ「707SC スワロフスキー・クリスタルバージョン」

「707SC スワロフスキー・クリスタルバージョン」は、女性に大人気のスワロフスキー・クリスタルを全面にあしらった特別モデル。発売時期は今春を予定し、価格はオープンプライス。スワロフスキー・クリスタルとは、オーストリアのスワ…

【デジカメ調査室】プロ機一新!キヤノン デジタル一眼レフ「EOS-1D Mark III」発表会

キヤノン株式会社は2007年2月22日(木)、都内 キヤノンSタワー「キヤノンホールS」において、プロ用デジタル一眼レフカメラと、コンパクトデジタルカメラ IXY DIGITALおよびPowerShotシリーズ、計5機種の新モデル記者発表会を行っ…