カットする前に見られる時代へ!失敗しないヘアサロン【3D化する顔写真たち】


3D化する顔写真たちで、紹介してきたアプリケーションの開発元であるモーションポートレート株式会社は、iPhoneアプリ開発の会社というわけではない。同社の本業は、3Dの画像合成によりアニメーションを作成できる「モーションポートレート技術」の開発と同技術によるビジネス展開だ。

これまで紹介してきたiPhoneアプリの「PhotoSpeak」「NullFace」「HourFace」は、いずれも同社が独自に開発した「モーションポートレート技術」を応用して実現できた作品たちである。

今回は、iPhoneアプリのベースにも利用されている「モーションポートレート技術」が、実際にどのようにビジネスで活用されているかを紹介しよう。

都内にあるヘアサロン「NORA(ノラ)」では、モーションポートレート技術を利用した3Dアニメーションでヘアスタイルをヴァーチャル体験できる「Virtual Preview(ヴァーチャルプレビュー)」というサービスを提供し、お客さんからの評価と人気を得ているという。さらに「Virtual Preview」を進化させた次世代版となる「BeautyStation(ビューティステーション)」も開発中とのことだ。

早速、モーションポートレート開発メンバーと、NORA代表 広江一也さんにお話しをうかがってみよう。
「ヴァーチャル プレビュー」の画面

■画面の中に変身した自分がいる「ヴァーチャル プレビュー」
「ヴァーチャル プレビュー」とは、どのようなものなのだろうか?
また、「ヴァーチャル プレビュー」の開発は、ヘアサロンのスタッフとプログラム開発者という違う世界の溝を埋める作業でもあったという。

●コンセプトは「BEAUTY is shared」親しみやすい上質感をテーマにしたNORA
「NORA」は、オシャレ好きな人であれば知る人ぞ知る、人気のヘアサロン。2007年4月27日、「BEAUTY is shared」をコンセプトに、様々な美を共有し一人一人の理想的な「あなたらしさ」を一緒に目指して青山骨董通りビル(3-4F)にオープンし、昨年の 11月17日に店舗拡張にともない表参道に移転した。新店舗は、表参道A1出口から1分と、より便利になった。
ヘアサロン「NORA」

●お客さんの満足度がアップ!ヘアスタイルの仕上がり見られる「ヴァーチャルプレビュー」
「ヴァーチャルプレビュー」は、一枚の顔写真から瞬時にお客さんの3Dアニメーションを生成し、リアルなヘアスタイル画像を見ることができるサービスなのだ。 124種類のヘアカラー、100種類のヘアスタイル、ヘアのボリューム調整が可能で、プロのスタイリストがお客さんにピッタリのヘアスタイルを事前に再現してくれるというものだ。

たとえば、ロングヘアーからショートヘアーに変えたいお客さんがいたとしよう。「ヴァーチャルプレビュー」を使用すれば、髪の毛をカットする前にカットしたあとのイメージを画面で確認することができる。カット以外にも、パーマやメッシュをかけた後も忠実に再現することができるという優れものなのだ。

NORA代表広江さんによると、同じヘアスタイルでも、お客さんごとに要求は微妙な違いがあるという。たとえば、髪のボリュームひとつをとってみても、「少し短く」「少し軽めに」といった表現をされるが、この「少し」がお客さんによって異なるため、仕上がりに不満を抱くケースもあった。しかし「ヴァーチャルプレビュー」を導入してからは、カット後のイメージそのものがパソコンの画面で確認できるので、お客さんが満足する仕上がりを確認できるため、こうしたトラブルは格段に減らすことができたという。

広江さんは「『ヴァーチャル プレビュー』は、お客様に仕上がりのイメージをヴァーチャル体験してもらうことで、新しいスタイルやカラーに挑戦してもらう機会を増やすことができました。」と、お客さんの積極性も引き出すこともできたと、効果を語ってくれた。
ヘアサロン「NORA」代表 広江一也さん

●ヘアスタイリストの思いが開発者に伝わらない
「ヴァーチャル プレビュー」は、お客さんには次回来店での期待感アップ、新しいスタイルへの満足感アップをもらし、お店にとっては顧客の増加や売上げアップをもたらす「コンサルテーションツール」となっているが、実現までの道のりは予想外に厳しいものだったそうだ。

開発当初から協力してきた広江さんは、「開発の方になかなかイメージが伝わらないので、その点で苦労しました。」という。
「茶色」と言っても、実際の色にはいくつかもの種類があり、色合いが異なるからだ。誰が見ても明らかに違うとわかる茶色もあれば、人によっては同じ色に感じてしまう茶色もあるのだ。

モーションポートレートの開発スタッフは、専門外のヘアスタイリングに関する知識があるわけではない。ヘアサロンのスタッフ同士であれば通じるイメージも、プログラム開発のスタッフとの間ではズレが生じてしまうからだ。そこで、広江さんは、ひとつずつ丁寧に説明して、開発スタッフとの溝を埋めていったという。

●パソコン環境に依存しない3D処理に一苦労
「ヴァーチャルプレビュー」の開発を担当したのが中橋さんだ。モーションポートレートの3D処理は、これまでC言語などで処理をしてきた。しかしグラフィックス処理はパソコンやOSの環境に影響されてしまう。これでは均一で安定したサービスとして提供できない。

中橋さんは、「ヴァーチャル プレビュー」を開発するにあたり、どうやってこの問題をクリアするかを考え、汎用性を高めるためにFlashでの開発を進めることにしたという。しかし、この作業は3D処理をいちから作り直すという作業だった。

中橋さんによると、もっとも苦労した点は、パソコン環境に依存せずに動かすことだったそうだ。
「Flash といっても、ActionScriptなので、プログラムを書くのと基本的に同じです。」と、言った中橋さんだが、WindowsやMac OSなどのパソコンの違いに加え、ウェブブラウザごとにフラッシュの動作も異なるため、どのパソコンとブラウザの組み合わせでも正常に表示されるように仕上げることは大変な作業だった。

こうした苦労をした中橋さんだが、Flash化で培った技術を今までのプログラムにフィードバックして3D処理を見直すことに役立てたという。
3D処理を担当した、中橋英通さん

■次世代版「ビューティ ステーション」
モーションポートレートでは、NORA 広江さんの強力なサポートのもと、「ヴァーチャル プレビュー」の次世代版ともいえる「BeautyStation(ビューティ ステーション)」を新たに開発中だ。

●アナログ世界とデジタル世界の壁
「ビューティ ステーション」は、「ヴァーチャルプレビュー」の技術をベースにより進化させたヘアスタイルのヴァーチャルシミュレーションである。「ヴァーチャルプレビュー」との大きな違いは、仕上がりが見られるだけでなく、顔認識技術を利用してお客さんに会ったヘアスタイルを提案できるところだ。

インターフェイスのデザインは、若返りと老化をバーチャル体験できる「HourFace」で登場した深澤さんが担当したが、開発当初はデザイン的な面で、ヘアスタイリストと開発者の間に大きな壁があったという。
「余計なものはいらないので、とにかくわかりやすく作ってくださいという要望を出しました。」と広江さんはいう。

ヘアサロンのスタッフは、現在でもアナログ的な世界で仕事をしている人が多い。つまり、パソコンの操作に慣れている人は少ないのだ。一方開発者は、パソコンを使いこなせるエキスパート。開発者にとって、簡単な操作と思えることが、ヘアサロンのスタッフには、難しいことに感じられてしまうのだ。

開発担当の深澤さんは、「多機能になればなるほど、操作性が複雑になってしまいます。ひと目でわかるデザインにすることに苦労しました。」と、インターフェイスをパソコンになれてない人でも使いやすくしたという。
開発チームの中でも深澤さんは美術関係の知識があったことから、広江さんも一番話しやしかったそうだ。
デザインを担当した、深澤 研さん

●写真で見えない生え際の重要さに開発者も驚く
「ビューティ ステーション」の特徴ともいえる顔認識を担当したのが、海龍式「顔相占い」でも登場した川村さんだ。

顔を認識させるのにあたり、海龍式「顔相占い」と同様に顔写真から「特徴点」と呼ばれる点を抽出するわけだが、川村さんを一番驚かせたのは、前髪で隠れた額の生え際からも特徴点をとることだった。

これは広江さんの指示によるものだが、写真からは見えない特徴点が、ヘアデザインでは大変重要なポイントになるということに、川村さんは驚きを隠せなかったという。
ちなみに、「ビューティ ステーション」では、20〜30の特徴点を使用して、顔を認識しヘアデザインをシミュレーションできるという。
顔認識のプログラミングを担当した、川村亮さん

「ヴァーチャル プレビュー」や「ビューティ ステーション」は、ヘアサロン「NORA」とのコラボレーションにより実現した画期的なヴァーチャルシミュレーションだ。海外からも大きな反響があるという。
モーションポートレートは今後も3D処理技術を活かし、多くの企業とのコラボレーションを展開をしていくという。

「ヴァーチャル プレビュー」
ヘアサロン「NORA」
モーションポートレート株式会社

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