夢の対談が実現!門林雄基氏 vs 千々和大輝氏【デジタルネイティブと企業】


2009年前半までは、バズワードなどと言われたこともあった「クラウドコンピューティング」は、2009年秋以降、急速に現実化し、いつの間にか今後のインフラで重要なものとなりつつある。

昨年末、そんなクラウドコンピューティングの世界での有名人でもある奈良先端科学技術大学院大学准教授 門林雄基氏と、現役高校1年生 千々和大輝氏による夢の対談が実現した。

■自分だけの言語も作った高校生
お二人が初めて会ったのは、2009年6月に開催された「クラウドを支える技術」の開発力を競う「クラウドコンピューティングコンペティション」。
大輝君のような若手がイベントに申し込んでくることについて門林氏は、「タイガーウッズのようなやつがいるといいと、期待はしていました。」と、思ったそうだ。

一方の大輝君は、コンペに参加したキッカケを「首藤先生が実行委員を務めていて参加してみないか?と言ったので、どうせなら参加してみようと思って参加しました。」と、語る。

高校生である大輝君は、既にセキュリティキャンプにも参加したことがあるというから驚きだ。セキュリティキャンプでは、チームごとに課題が異なるが、大輝君が参加したチームでは、講義を受けてから自分たちでプログラムを完成させ最後に発表するというものだったという。

お二人の年齢は、大輝君が15歳、門林氏は40歳と、実に25歳の年齢差がある。
門林氏は、自身の15歳の頃をこう語る。「アセンブラを書くのはだいぶ飽きて、コンパイラを作ろうとしていたかな。紀伊国屋かどこかの本屋でDDJを買ってきて、それを読んでいましたね。」

そこで門林氏は、大輝君に「コンパイラを作ったことはある?」と尋ねてみると、大輝君の口からは「1回、インタプリタなら作ったことがあります。」という驚きの答えが返ってきた。大輝君が作ったインタプリタは、俗に「俺言語」と呼ばれる自分だけの言語だ。
現役高校1年生 千々和大輝氏

■世代の違いが露わに! もはやパソコン通信は伝説になっていた
大輝君がパソコンを始めたのは、10歳くらいだという。小学生3、4年の頃、小学校にパソコン室ができて、そこで初めてパソコンを触ったそうだ。
プログラミングを始めたのは、中学1、2年生くらいからで、それまではパソコン室でゲームで遊んでいた。
門林氏が小学校6年生の頃は、NEC PC-8001が発売されたくらいなので、環境の変化には驚かされるばかりだ。

門林氏は、大輝君と同じ年頃にはパソコン通信をしていた。大輝君のパソコン通信については「聞いたことはあります。」発言を受けて、門林雄基氏は「インターネット・ネイティブはスゴイ!パソコン通信は伝説なんだ。」と、時代の変化を表現すると、思わず同席の関係者からも笑みがこぼれた。

門林氏は、友人が作ったBBSに高速モデムでパソコン通信を利用していたそうだ。モデムで相手方のパソコンに接続してファイルを転送するだけのものだったが、パソコン通信の向こうにあるモノが欲しかったという。

小学校では、パソコンが常にインターネットに接続されていたという大輝君の話に、
門林氏は、「大学の研究室に潜り込んだら、インターネットが使いたい放題で、ずっと利用させていただいてましたね。」と、当時は大学生でないと同じ環境がなかったことを懐かしそうに語ってくれた。
奈良先端科学技術大学院大学准教授 門林雄基氏

■若者は活字離れしていない
門林氏によると、今日のようにインターネットを当たり前のように使える時代では、情報を集めようと思えばいくらでも集められるところが、以前とはもの凄く違うという。

インターネットの普及に伴い、若者の活字離れが更に進んだと指摘されているが、デジタルネイティブ世代の大輝君は書籍などは購入してまで読むのだろう? 大輝君にうかがってみると、意外にも
「インターネットのサイトにない情報が(本には)あるので、買います。」との答えが返ってきた。

門林氏は、「活字離れ」というイメージのはメディアが謳っているだけで、読む文字数は今の若い人のほうが絶対的に増えていると指摘する。

■共通点!「カッコイイ」が始めるキッカケ
インターネットにどっぷりと浸かっている大輝君だが、同世代のほかの友達はどうなのだろうか? 大輝君は、「友達はやっぱりテレビのほうが面白いと言います。」と、苦笑しながら語ってれた。

今やリメイク版のドラゴンボールやCGを駆使したドラマやケーブルTVなどで最新映画なども見られる時代だ。多くに若者がネットよりテレビが好きというのも無理もない話だ。それでも大輝君は、テレビよりもインターネットのほうが面白いのだという。

大輝君はSkip Graphを応用したP2P型Key-Valueストアを実装した経験もあるというが、P2Pでのアニメなどの違法な配布には興味はないという。それでも、高校生の大輝君がP2Pでの実装経験があるというのは驚きだ。

P2Pオーバーレイを実装してみようと思ったキッカケをうかがってみると、
「P2Pカッコイイなと思って...。自分で実装しようと思って始めました。」と、照れ笑いを隠しながら語ってくれた。

ここで、二人の共通点が見つかった。門林氏がコンパイラを作ってみたいと思ったキッカケも、実は大輝君と同様に、コンパイラはカッコイイと思ったからだそうだ。
奈良先端科学技術大学院大学准教授 門林雄基氏

■プログラミングと勉強は両立するのか
門林氏の「何か聞いてみたいことはありませんか?」との問いかけに、大輝君から学生らしい質問が飛び出した。
「高校でプログラミングしてたら、勉強よりもプログラミングに熱中してしまいそうです。そういうときは、どういう風にすれば、勉強ができるのでしょうか?」

門林氏は「ボクの場合には、コンパイラとCPUの仕組みを教えてくれる大学があるなら入ろうと思って勉強しましたね。うちの親は医者にならないかと言っていましたが、人間のメンテナンスは嫌だったので...。まあ、自分の信念でやるしかないですね。」やりたいことがはじめにあって、それをやるために勉強を頑張ればよいと、プログラムのために勉強をしたと回答する。

続けて「脳のニューロンの仕組みを利用して人間の思考をプログラミングするというのに生物の基礎知識は必要だし、あらゆるもののヒントになるから、勉強しておいて損はありません。英語はどんな領域でも必要だし、数学は絶対必要だし...。35歳、40歳になれば、必要性がわかりますよ。」と、学校の先生らしい答えを返した。

門林氏は、最近話題となっている「下流志向」にも触れ、学ぶことの価値を学ぶ前に「これはどういう意味があるのですか?」と質問することについて、教育をマーケットとしてみすぎてしまう傾向があると指摘する。
勉強は自分でやってみて、初めてその価値がわかるもので、大学に入ることは通過点であり、高い知識をベースに新しいことを創造することが重要だと指摘した。

最後に大輝君に将来の目標についてうかがってみた。
大輝君は、
「プログラミングをもっとやりたい。P2Pのシステムで何か作れたらよいと思います。今までにない新しいものを作れたらよいなと。実際にあるアルゴリズムを使って大規模なシステムを作りたい。」という力強い答えが返ってきた。

プログラミングの世界では、ヒットを出すプログラマーを「ロックスタープログラマー」と呼んでいる。現在、大輝君は、着実にロックスタープログラマーへの道を歩んでいると言っても過言ではないだろう。
将来の目標について語る、千々和大輝氏

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