充電にケーブルなんていらない?ワイヤレスで電気を送る技術【最新ハイテク講座】


携帯電話やデジタルカメラ、ノートパソコンなど、ハイテク機器のバッテリーを充電するにはACアダプターのような専用ケーブルが必要だ。電源コンセントからケーブルを使って充電することは当たり前のように思われてきたが、最近にわかに電源コードなしで充電する技術が現実味を帯びてきた。

携帯電話のチップセットなどを手がけるクアルコムは、ケーブルなしで携帯電話やデジタルカメラを充電するためのワイヤレス充電技術「eZone」を年内にも登場させるべく、そのデモを披露している。

パソコンのプロセッサーのメーカーとして名を知られるインテルでも、電源コードなしで家電製品の充電を可能とする技術をすでに発表している。

そこで今回は、携帯電話やデジタルカメラの充電でケーブルを必要としないワイヤレス充電技術についてフォーカスしてみた。


■どうしてケーブルなしで充電できるの?
ワイヤレスで電気を流す技術は、身近なところにある。具体的な例としては、発電機がわかりやすいだろう。
発電機は、コイルの中で磁石を回転させて電力を発生する。このときの磁石は、コイルに接してはいないが、コイルには電気が流れる。同様に2つのコイルを用意し、どちらか一方に電流を流すと、もう一方のコイルは接触していなくても電流を流すことができる。

これらの現象は、英国の物理学者ファラデーが発見した「電磁誘導」と呼ばれる方式であり、テレビ・コマーシャルでよく見るIHクッキングヒーターも、実はこの電磁誘導を応用した調理器具だ。
インテルが電源コード不要の「ワイヤレス電力」を開発、実演ムービーを公開 - GIGAZINE
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■ワイヤレス充電の種類と現状
現在、ワイヤレス充電には、電流を通したコイルから発生する磁力により電力を発生させる「電磁誘導タイプ」、電波を電力に変換する「電波受信タイプ」、磁場の共鳴を利用する「共鳴タイプ」の3種類あるが、ここでは今もっとも注目されている2つのワイヤレス充電技術に絞って紹介しよう。

・磁界共鳴でケーブルレス充電「eZone」 - クアルコム
クアルコムは、ワイヤレスジャパン2009において、磁界共鳴方式によるケーブルレス充電のデモを披露した。日本では無線免許の関係でモックとビデオによる紹介だけだったが、海外では実際に動作する「eZone」が展示された。
携帯電話などをケーブル不要で充電できるクアルコムのワイヤレス充電技術「eZone」は年内登場へ - GIGAZINE

「eZone」の利点は、データ転送も可能なところだ。携帯電話やデジタルカメラを専用充電台に置けば、充電だけでなく、データも非接触で転送することができる。さらに無線LANやBluetoothにも影響を及ぼさず、金属を充電台に置いても過熱される危険性がない。

クアルコムでは、機器の内蔵タイプは2011年を目処に実用化をすすめているが、iPodのジャケットのような外付けタイプは年内発売を予定している。

・ワイヤレス共振エネルギー・リンク - インテル
インテルは2008年、開発者向けの会議「Intel Developer Forum(IDF)」において、無線による電力伝送技術「ワイヤレス共振エネルギー・リンク:Wireless Resonant Energy Link(WREL)」を発表した。
WRELは、電力と音声を同じ周波数で送信できる技術だ。「WREL」は、マサチューセッツ工科大学の研究をベースに開発が進められており、すでに60ワットの電球を点灯させることに成功している。
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Intel Labs Seattle - Intel Labs Seattle

WRELの基本原理は、歌手が声でガラスを割るのとよく似ている。声でガラスが割れるのは、ガラスの固有振動数で音響エネルギーが吸収されるからだ。同様に、受信側の共振器の固有振動数と共振することで、エネルギーは効率よく吸収させることができる。

WRELの技術をノートパソコンに搭載すれば、送信側の共振器から数十センチの距離にノートパソコンを近づけるだけでバッテリーを充電することができる。
将来的には、ノートパソコンを持って空港や部屋に入るだけで自然に充電される日がやってくるかもしれない。

■ワイヤレス充電の課題
素晴らしい技術のワイヤレス充電にも課題がある。ある種のエネルギーが空間に存在するため、人体や、ほかの家電機器への影響が懸念されているのだ。

実際、強力な電波が原因で、しまっておいた石油ストーブから突然出火し、火事となった事例がある。
不法電波 - 総務省関東総合通信局

以上のように、ワイヤレス充電はケーブルレスで充電ができる便利な技術だが、実用化までには今すこしの時間が掛かりそうだ。

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