外出先でネットを楽しもう!モバイル通信の最前線【最新ハイテク講座】


ネットブックはインターネットのサイト閲覧、メールの送受信を主な目的として低価格化を実現したミニノートPCだ。そんなネットブックを持ち歩いている人の中には、「会社のメールを出先でチェックしたい」「移動中の中でもインターネットで調べ物をしたい」という人もいるであろう。そういうニーズに応えてくれるのがモバイル通信機器によるデータ通信(モバイル通信)だ。

データ通信の世界では、ウィルコムとイー・モバイルがいち早く通信料金の定額化を打ち出したが、最近になってNTTドコモもデータ通信を定額とし、モバイル通信の世界はにわかに活気づいている。
NTTドコモ、PCからのデータ通信も定額に--「パケ・ホーダイ ダブル」で上限1万3650円 - CNET Japan

そこで今回は、現在主流のモバイル通信の最前線に迫ってみよう。


■モバイル通信機器の技術と歴史
モバイル通信とは、どういったものなのか。モバイル通信の種類や通信方式を簡単にまとめてみた。

●モバイル通信とは?
屋外でも無線LANスポットを使えば、屋外でも快適なインターネットを利用できるが、使えるエリアが狭い点や無線LANを導入している施設ごとに利用できるサービスが違う点など、実際に使ってみると不便なことが多々ある。

「いつでもどこでもインターネットに接続できたらいいのに……」というユーザーの要望に応えてくれる強い見方がHSDPAやW-OAMを利用したモバイル通信というわけだ。


●モバイル通信の種類
モバイル通信の機器は利用形態の違いにより、次の3種類に大別できる。

・USBタイプ
パソコンのUSBポートに接続するタイプ。スティック型はUSBメモリーのような形状をしている。

・PCカードタイプ
パソコンのPCカードスロットに接続するタイプ。PCカード規格の違いで、PCカードタイプとCFカードタイプ、ExpressCard/34タイプの3種類がある。

・携帯電話
携帯電話の中には、パソコンとUSBケーブルまたはBluetoothで接続することで、モバイル通信機器として利用できる機種がある。携帯電話をモバイル通信機器として使うことを「モデム機能」という。


●モバイル通信の通信方式
テレビ放送にアナログ放送とデジタル放送があるように、一口にモバイル通信機器にもいくつかの種類がある。ここでは体表的な通信方式をまとめてみた。

・HSDPA
HSDPAとは、High Speed Downlink Packet Accessの略称で、W-CDMAをベースに拡張した高速パケット通信規格だ。
下り(データをパソコンに取り込む)の高速化を「HSDPA」、上り(データをサーバーにアップする)の高速化を「HSUPA」または「EUL」と呼んでいる。

・HSUPA
HSUPAは、High Speed Uplink Packet Accessの略称。2006年に規定された上り方向の高速化を行うパケット通信規格だ。3GPPではHSDPAとの混乱を避けるため、「Enhanced UpLink(EUL)」と呼ばれ、カテゴリの違いにより最大通信速度が異なる。

表1.カテゴリ 最大送信速度
1  0.73メガビット/秒
2  1.46メガビット/秒
3  1.46メガビット/秒
4  2.93メガビット/秒
5  2.00メガビット/秒
6  5.76メガビット/秒
 7※1 11.5メガビット/秒
※1 GPP Rel7

・HSPA Evolution
HSPA Evolutionは、HSPAをベースに通信速度を高速化させた規格。「HSPA+、Enhanced HSPA(eHSPA)」、「Evolved HSPA」とも呼ばれる。下り最大22Mbps、上り最大12Mbpsを実現する。

・W-OAM
W-OAMはWILLCOM Optimized Adaptive Modulationの略称で、PHS高度化通信規格。電波状態に応じて最適な変調方式が自動的に選択され、対応エリアでは最大408kbpsのデータ通信が可能。

・W-OAM typeG
W-OAMをベースにさらに高速化させた通信規格。W-OAMにおける「8PSK」「QPSK」「BPSK」の3つの変調方式に加え、より高速な「64QAM」「32QAM」「16QAM」による変調方式の切り替えが可能。8xパケット方式で最大512kbpsの高速データ通信が可能。

・次世代PHS
ウィルコムでは、OFDMA※2技術を中核とする「次世代PHSシステム」を開発中。導入されると、数十Mbpsレベルのデータ通信が可能。
※2 Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access(直交周波数分割多元接続)


●モバイル通信の現状
キャリアごとのモバイル通信の現状をみてみよう。

・NTTドコモ
「FOMAハイスピード」と呼ばれるHSDPAの通信サービスを2006年8月31日より開始。現在、FOMAハイスピードエリア内であれば、最大受信通信速度7.2Mbps(カテゴリ8)もしくは3.6Mbpsの高速パケット通信が可能(機種により通信速度は異なる)。2008年12月26日に人口カバー率100%を達成させた。
FOMAハイスピード - NTTドコモ

・ソフトバンクモバイル
「3Gハイスピード」と呼ばれるHSDPAの通信サービスを2006年10月1日より開始。下り最大3.6Mbpsに加え下り最大7.2Mbps対応機種※3も登場し、より高速なインターネット接続環境を実現した。通信エリアは、3.6Mbps対応エリアが全国の県庁所在地および主要都市、首都圏/16号線内、東海/名古屋市および周辺の主要都市、静岡市、関西/京阪神エリア。7.2Mbps対応エリアは関東、東海、関西の一部エリアで順次拡大中。
※3 下り最大7.2Mbps対応機種は930SC、C01SWのみ
3Gハイスピード - ソフトバンクモバイル

・イー・モバイル
「EMモバイルブロードバンド」と呼ばれるSDPAの通信サービスを2007年3月31日より開始。2007年12月に業界初の最高受信通信速度7.2MbpsのHSDPAデータ通信サービスを、2008年11月20日には業界初の最高送信通信速度1.4MbpsのHSUPA通信サービスを開始した。サービスエリアは日本全国の主要都市だが、順次提供エリアを拡大の予定。
EMモバイルブロードバンド - イー・モバイル

・ウィルコム
「AIR-EDGE」と呼ばれるパケット通信サービスを提供。W-OAM typeG対応エリア内では、8xパケット方式で最大512kbpsの高速データ通信が可能。
ますます快適に - ウィルコム


モバイル通信は現在、キャリアごとに提供する通信サービスや対応エリアが異なるものの、いずれのキャリアも高速で安定した通信環境を実現すべく努力しているのが現状だ。
サービスによっては、従量制の料金プランもあるので、通信料金を気にしないでインターネットを楽しみたい場合には、通信サービスに加え、定額制の料金プランが用意されているか否かを契約時にチェックすると良いであろう。


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