「娯楽の王様」から「情報の王様」へ 地デジで進化するテレビの最新事情【最新ハイテク講座】


すっかり生活の中にインターネットが定着した今日だが、情報メディアとしてのテレビの存在は未だに大きなものだ。戦後に三種の神器として登場したテレビもアナログからデジタルへと時代の変化を迎えようとしている。CMやNHKのテロップなどでも盛んにアナウンスされているアナログ放送からデジタル放送への転換がそれだ。

総務省は2011年7月24日に地上デジタル放送へ完全移行、アナログ放送の打ち切りをアナウンスしていたが、一般家庭への地上デジタル放送への対応が低いことから2011年7月24日以降もアナログ放送の受信が可能となる処置をとるとトーンダウンしている。
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地上デジタル放送に対応するためには、テレビ(地上デジタル放送対応機器)の導入、つまりテレビの買い換えが必要となる。家電各社は、テレビ買い換え市場の拡大を見越して、地上デジタル放送に対応した新製品を投入、商戦も激化している。地上デジタル放送対応テレビの新技術では、パナソニックの厚さが8.8mmのプラズマテレビを発表するなど、薄型化と高画質化が加速している。
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そこで今回は、地上デジタル放送へむけた「テレビ」の最前線に迫ってみよう。

■薄型テレビの種類と特徴
最近では有機ELテレビなどの薄型テレビも登場しているが、参入企業が少ないことからまだまだ高価だ。ここでは薄型テレビの代表選手ともいえる液晶テレビとプラズマテレビについてみてみよう。

●液晶テレビ
液晶は、文字通りに液体と固体(結晶)の中間的な物質だ。液晶テレビでは2枚のガラス板の間に液晶を封入し、電圧を掛けることによって液晶分子の向きを変え、光の透過率を増減させて映像を表示している。液晶自体は発光しないので、液晶パネルの背後にはバックライトが配置される。


●プラズマテレビ
プラズマは、原子や分子から電子が離れ、イオンと電子が混在した状態となる放電現象だ(プラズマ放電)。神秘的な光を放つオーロラもプラズマ現象のひとつで、もっとも身近な例は「蛍光灯」があげられる。

プラズマテレビは蛍光灯と基本的に同じ原理で、赤色(R)・緑色(G)・青色(B)の色を付けた小さな蛍光灯を発光させて表示を行っている。


●どちらがお得か - 液晶 vs プラズマ
液晶テレビはプラズマテレビに比べて低消費電力で電気代を節約できる反面、大画面テレビが作れない、応答速度が遅いという弱点があった。ところが、最近は、技術の進歩によって大型画面の液晶テレビも登場してきており、後述する倍速駆動で応答速度の問題もクリアしている。

一方、プラズマテレビはパネル自体が発光するので、液晶テレビに比べて表示速度が速いのが最大の特徴。コントラストが高く、階調表現も豊かだ。画面が大きいほど低コストになる反面、30型以下となると、液晶テレビしか選択肢はない。


■ハイビジョンの種類
薄型テレビは液晶やプラズマを問わず、地上デジタル放送を視聴するうえで忘れてはならないキーワードが「ハイビジョンテレビ」だ。実はハイビジョンには、いくつかの種類がある。

●ハイビジョンとフルハイビジョン
地上デジタル放送の方式は、映像信号方式の違いにより1080iと720pの2種類に大別される。

720pは総走査線750本で、フレーム周波数が59.94Hzの順次走査(プログレッシブスキャン)方式による映像を指す。縦と横の画素数が1,280×720ピクセル(約150万画素数)で、通常「ハイビジョンテレビ」と呼ばれる。

一方、1080iはフレーム周波数が29.97Hzの飛び越し走査(インターレース)方式による映像を指す。縦と横の画素数が1,920×1,080ピクセル(約207万画素数)で、「フルハイビジョンテレビ」または「フルHD」と呼ばれるのが一般的だ。

どちらの方式も画面の縦と横の比(アスペクト比)は16:9だが、1080iは720pに比べてクッキリとした高精細な画像を見ることができる。
ちなみに地上デジタル放送は1,440×1,080ピクセル、BSデジタル放送やスカパー!の一部の番組は1,920×1,080ピクセルで放送されている。


■テレビを支える技術
最新のテレビには、どのような技術が盛り込まれているのか。簡単にまとめてみた。

●液晶テレビの弱点を克服 - 倍速駆動
液晶テレビの最大の弱点は、スポーツなどの動きが激しい映像を表示させた際、表示が追いつかずに残像が残る点だ。地上デジタル放送は毎秒60コマの表示だが(60GHz)だが、液晶テレビで毎秒60コマの映像を表示させても滑らかな動きの再現は難しい。

そこで考え出されたのが「倍速駆動」という技術である。

倍速駆動の液晶テレビは、各コマの間を補完するコマを自動生成し、毎秒60コマの表示を毎秒120コマに増やして残像やノイズを大幅に減らしている(倍速駆動)。

ソニーの最新の液晶テレビは、倍速駆動を拡張した毎秒240コマの表示を可能とした「モーションフロー240Hz」(4倍速駆動)により残像感を低減している。

ブラビア W1シリーズ - ソニー


●バックライト技術
液晶テレビに使われる液晶は、それ自体が発光しないので、通常はバックライトに小型の蛍光灯が使用されている。このバックライトに高輝度の発光ダイオード(LED)を使うタイプが「LEDバックライト」と呼ばれるものだ。

ソニーのRGB LEDバックライトは、このLEDバックライトを進化させたもので、赤色(R)・緑色(G)・青色(B)の色を持つLEDバックライトを進化バックライトによって白色の光を再現し、従来の液晶テレビに比べて色再現性を向上させることに成功した。

さらに部分的にLEDバックライトの点灯をゼロの状態に近づけることで、従来の液晶テレビに比べて黒の深みが増し、ダイナミックコントラスト100万:1以上というメリハリのある画面を実現した。

ブラビア XR1シリーズ - ソニー


●ネットや家電に繋がる時代へ
インターネットテレビと呼称される製品が最近登場してきているが、インターネットテレビはインターネットのLANケーブルをテレビに接続することで、ビデオ・オン・デマンドが楽しめるテレビだ。見たいときに好きな番組を見られるというのが最大の利点となる。

代表的なサービスとしては、パナソニックやソニーによる「アクトビラ」、USENの動画配信サービス「GyaO」※などがあげられる。
※テレビでGyaOの番組を視聴するには「ギャオプラス」という端末が必要
アクトビラ
GyaO

また最近では、東芝なら「レグザリンク」、ソニーなら「ブラビアリンク」など、HDMIケーブルを使用してテレビとレコーダー、シアターシステムをひとつのリモコンで管理できるテレビも増えてきた。


「娯楽の王様」とされるテレビだが、今後のテレビはインターネットやほかの家電機器と接続することで、家庭機器の中心にもなろうとしている。

近い将来、テレビが「情報の王様」と呼ばれる時代が訪れるのかもしれない。


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