ハイビジョン対応へ、どこまで進化すのか「レコーダー」【最新ハイテク講座】


ブルーレイとHD DVDの熾烈な次世代DVD争いに決着がついてから既に9か月の月日が流れ、映像を記録できる映像録画機(以下、レコーダー)は、ハイビジョン時代へとその歩みを加速させている。

高画質なハイビジョン映像を家庭でも録画できるブルーレイレコーダーは、注目度も高くカカクコムの調査でも未所有者のうちの5割は「購入したい」または「購入を検討している」との回答結果が出ている。
この1年で急普及のBDレコーダー、今後は価格がカギか? カカクコム調べ - MarkeZine

ブルーレイレコーダーは、急速な低価格化が進んでおり、レンタルショップにはブルーレイソフトやメディアが置かれるようになり、ブルーレイドライブを搭載したモバイルノートパソコンも登場し始めている。
「ゲオ」もブルーレイ・ディスクのレンタルを開始 - Techinsight Japan
軽くてコンパクトなブルーレイ搭載PC ソニー - J-CASTニュース

そこで今回は映像を録画するレコーダーの歴史をひもときながら、新世代のブルーレイディスクの魅力とその技術に迫ってみよう。

■世界初のビデオレコーダーは?
今や当たり前となった映像レコーダーの発祥を知る人は、あまり多くない。まずは、映像録画機の歴史を振り返ってみよう。

世界初のビデオレコーダーには諸説あるが、商業的に最初に成功したビデオテープレコーダーは米国のアンペックス社が1956年に発売した
※約5.1cm

「VRX-1000」とされている。VRX-1000は記録メディアに2インチ※幅のテープを使用し、価格は5万ドル。当時の導入はテレビ局や大きな製作会社に限られていた。

その後はソニーとフィリップスが1963年、それぞれ独自の工夫を凝らしたビデオレコーダーを発売したが、これらは業務用であり、家庭向けのビデオレコーダーの登場は、ソニーが1965年に発売した「CV-2000」まで待たなければならなかった。

ちなみに当時のビデオレコーダーのテープは着脱可能な製品でもオープンリード式であり、カセット式のように簡単に着脱できるものはまだ存在していなかった。


■ビデオテープ10年戦争が勃発 - VHS vs ベータ
ビデオレコーダーの歴史を語るうえで、「VHS」と「ベータ」の争いを避けて通る訳にはいかないだろう。どちらもカセット式テープを使用したが、両者に互換性はなく、家電メーカーや市場を2分しての戦いは10年にも及んだ。

●VHS規格
日本ビクターは1976年、家庭用ビデオレコーダー向けに「VHS」と呼ばれるビデオ規格を開発した。VHSはもともと「Vertical Helical Scan」の略称だが、のちに「Video Home System」が略称として定着した。

●ベータマックス規格
ソニーは1975年、「ベータマックス(Betamax)」と呼ばれる家庭用ビデオレコーダーの規格を開発していた。ちなみに「ベータマックス」の名前の由来だが、ギリシャ文字のベータのようにヘッドにテープを巻き付ける、あるいはテープ上にガードバンドをとらないで記録する(ベタで記録する)ことに由来するとされている。

●なぜ、VHS規格は勝利できたのか
VHSとベータとの規格争いはおよそ10年に渡るという長期戦となったが、VHS規格が最終的に生き残ることになる。

VHS規格がベータ規格に勝った理由としては、VHS規格を採用するメーカーを積極的に獲得した点と記録時間を最初から2時間に設定し長時間化(3倍モードなど)に成功した点が大きかったといわれている。

VHSは今日(2008年現在)まで利用されてきたが、映像記録に接触式の磁気テープを使用しているためテープの摩耗や磁気の劣化によるデータの消失が避けられないという弱点があった。こうした弱点を克服し、テレビの高画質化や長期保存、さらなる長時間記録への要望から、新しいレコーダーの登場が待ち望まれていた。

ビクター・JVCの歴史(PDF形式) - ビクター
記録メディアの歴史 - ソニー


■DVD登場!磁気から光学の時代へ - 非接触式メディアへの変遷
接触式という仕様から経年劣化が大きい磁気テープから、時代は非接触式である光ディスクへと記録メディアは変遷をしていくことになる。

●DVDレコーダーとHDD/DVDレコーダー
VHSレコーダーに代わって一般家庭に普及したレコーダーはDVDレコーダー(DVD/HDDレコーダー)だ。DVDレコーダーはDVD-Videoの再生に加え、記録型DVDに映像を録画する。HDD/DVDレコーダーはDVDレコーダーにハードディスクを搭載したモデルで、テレビからハードディスクに録画し、録画データをDVDメディアにも記録できるメリットがある。

DVDメディアはVHS規格のビデオテープに比べて保存性に優れ、小さく湿気に強いという特徴がある。メディアへの記録や再生にレーザー光を使用するためテープのような接触による劣化はないが、まったく劣化しないというわけではない。光メディアも太陽光などによる光学的な劣化があり、これらは後述する次世代DVDでも同様だ。

2003年12月、地上デジタルテレビジョン放送が開始され放送地域が拡大していくと、「ハイビジョンレコーダー」と呼ばれる地上/BS/CSデジタルチューナーを搭載したレコーダーが登場した。

ハイビジョン放送はMPEG-2 TSのファイルとして電波で送信されたが、DVDレコーダーはDVD-Videoの規格はMPEG-2 PS以外の記録には対応していないので、どうしても画質を落とす必要があった。またハイビジョン放送を高画質で記録するにはメディアのディスク容量も不足しており、次世代DVDの必要性が強く叫ばれるようになった。


■ハイビジョンへ次世代DVD競争 - ブルーレイ vs HD DVD
DVDレコーダーの次に登場した次世代DVDはテレビのハイビジョン放送を高画質のまま録画するために考案された。ソニーや松下電器産業、シャープなどによるブルーレイディスク(Blu-ray Disc)陣営と、東芝を中心となるHD DVD陣営が次世代の標準規格をめぐり激しい競争が展開された。

●青色レーザーで高密度化を実現
次世代DVDがDVDよりも大容量化できたのは青色レーザーのおかげだ。DVDは波長が650ナノmの赤色レーザーを使用しているのに対し、ブルーレイディスクとHD DVDはいずれも波長が405ナノmの青色レーザー光を使用している。青色レーザーは赤色レーザーよりも高密度であるぶん、メディアに照射されるビームスポットも高密度であり、これにより限られたメディアの大きさの中にたくさんの情報を書き出すことができる。

直感的にわかりやすい例をあげてみよう。レーザーを鉛筆の芯に例えると、ビームスポットは芯の先にあたる。青色レーザーは赤色レーザーに比べて芯の先が細いので、同じ大きさのメディアであっても高密度に情報を書き込めるわけだ。

●ディスク容量の違い
ブルーレイディスクとHD DVDとでは、ディスク容量も異なる。ブルーレイディスクでは、単層の光ディスク(25Gバイト)の場合、BSデジタル放送※1なら2時間強の地上デジタル放送※2なら3時間強で、外ビジョンの映像をメディアに残せる(表1)。一方のHD DVDは、片面一層の光ディスク(15Gバイト)の場合、BSデジタル放送※3なら約75分の映像をメディアに残せる。
※1 1920×1080i、 24Mbps
※2 1440×1080i、16.8Mbps
※3 1920×1080i、 24Mbps
表1.ブルーレイディスクの種類と記憶容量
種類単層2層
BD-ROM25Gバイト50Gバイト
BD-R25Gバイト50Gバイト
BD-RE25Gバイト50Gバイト

表2.HD DVDの種類と記憶容量
種類片面一層片面二層片面三層
HD DVD-ROM15Gバイト30Gバイト51Gバイト
HD DVD-R15Gバイト30Gバイト-
HD DVD-RW15Gバイト30Gバイト-
HD-DVD-RAM20Gバイト--
※片面二層は未策定


ブルーレイディスクとHD DVDはいずれも青色レーザーを採用しているが、ブルーレイディスクは0.1mmの深さに記録層があるのに対して、HD DVDはDVDと同様に0.6mmの深さに記録層があった。そのためHD DVDはDVDの製造機器の一部を流用でき、メディアの製造コストを抑えられるというメリットがあったものの、賛同するメーカーの多さからブルーレイディスク陣営が最終的に勝利を収める結果となった。


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