【カオス通信】アニメにおける棒読み声優誕生のカラクリ


今期放映のテレビアニメも初回から数話が経過し、各作品の評価も徐々に固まりつつあります。今期の評価の中でよく聞かれるのが、「声優が棒(読み)な作品が多い」という意見です。私も正直ミスキャストな作品はあると感じていますが言われるほど悪くなく、むしろ好みというケースもあったりします。キャスティングをどう感じるかは個人の好みもありますので、最終的には自分の中で結論を出せばいいのではないかと。ただ、中には明らかに「これはちょっと……」と言わざるを得ないケースがあるのもまた事実です。

キャラクターがどんな声で喋るのか、担当声優の演技力はどうなのかという話題は、アニメを見る側にとっては大きな関心事です。声質が合う合わないという点に関しては慣れが解決してくれる部分もありますが、肝心要の“演技力”の不足となると、これはもうどうしようもありません。その場合、声優個人が非難されてしまうことが多いのですが、冷静に考えれば責任は別のところにあることに気付くはずです。今回は、そんな声優のキャスティングに関する事情を書いてみようと思います。

■キャスティングを決めるオトナ達の思惑
まず大前提として考えなければならないのは、あくまで声優はオーディションを受ける側であって、キャスティングの決定権は持っていないという点です。問題の所在をどこかに求めるとするならば、監督やプロデューサーといった製作スタッフ側を見るべきでしょう。ハッキリ言ってしまえば、大根役者を使おうと決めた人物に一番の問題があるといえます。

さて、ここでひとつ疑問が出てきます。それはアニメ作りのプロ達が、わざわざ作品をダメにするようなキャスティングを好んでするはずがないという点です。この謎は、アニメを多くの予算と人材を必要とする“商品”と考えると解けてきます。

本来、アニメ製作で最大の権限を持つべきなのは現場の指揮官である“監督”のはずですが、実際は監督の意見が必ずしも全部通るわけではありません。例えば、ロボットアニメのスポンサーがおもちゃメーカーだった場合、おもちゃが売れるようなギミックを主役のロボットに求めるのは企業として当然の行為です。「合体とか変型とか、この作品には必要ない!」と監督が考えていたとしても、お金を出してくれるスポンサーの意見を無視するわけにはいかないでしょう。

声優の場合も同様で、人気タレントのネームバリューに便乗したい、CDなどの関連商品で儲けたいという意見が重要視された場合、キャラクターのイメージを度外視したキャスティングになることがあります。それが監督本来の意向と違っていたとしても多くの場合で仕事として割り切るしかありません。

監督のイメージと違っていてもキャスティングされたのが本職の声優や演技力のある俳優であれば、結果オーライでしょう。アニメは本人の顔は出ないわけですから声色を工夫するなどの役作りの部分でカバーできます。要は演技力があればなんとかなるわけです。勿論、声のイメージというのも重要ですから、本来ならば演技と声質の両方で検討する正規のオーディションを経て選ばれるべきではあります。

問題なのは、演技力のない“なんちゃって声優”・“棒声優”を起用せざるを得ない状況になった場合です。その時のガッカリ感は作品に対する視聴者の興味を根こそぎ奪う破壊力を秘めています。いちアニメファンとしては、そのような余計な雑音はなるべく排除してほしいとも思うのですが、関連企業の方々の必死な様子を見ていると、なんとも複雑な気分になります。

DVDを売るために毎日ニコニコ動画をチェックして削除依頼を出しまくっているといった話を直に聞くと、ニコ中の私はなんだか申し訳ないような気もしてきます。(まあ、私はDVDレコーダーやパソコンで地上派アニメを録りまくってるので、実際ニコ動で見るのはMADアニメばかりなんですが。)また、新作アニメの宣伝をページの余白で構わないので書いて欲しいなどと言われると、こちらもなんとかしてあげたいと思ったりもします。本当にアニメに関わる人達はいろんな意味で必死なのです。

■とにかく予算がない
アニメの予算についても少し書いておきます。テレビアニメの予算が少ないことは、広く知られるようになっていますが、その影響は声優に支払うギャラにも当然及んでいます。実際に声優がどのくらいギャラをもらっているかはケースバイケースですが、30分番組1本の出演で新人の手取りが1万8900円(※1)という例などもありますので、ひとつの目安にはなると思います。
(※1)新人のギャラが1万8900円:日本俳優連合外画動画部会の場合。ソースは、声優・辻谷耕史氏のHPのQ&Aコーナー(Q80より)。ちなみに10年以上活躍している声優でも、ギャラのランクは新人とさほど変わらない人が大半とのこと。
関連サイト
<辻谷耕史 home page

2時間ドラマに出ている人気俳優のギャラは、300万とか400万とかいうレベルで語られているようですので、まさに別世界。桁が二桁違います。声優も人気が出てくれば当然ギャラもアップしていくわけですが、ドラマのギャラとは比較になりません。それでも現場は、限られた予算の中でやりくりして払っているというのがアニメ業界の現実です。

よほど恵まれた作品でない限り、予算の制限からギャラが高い声優は起用しにくくなっていきます。仮に低予算の作品で知名度のあるベテランを1人呼んだら、中堅どころは誰も呼べなくなります。そうなると結果的にギャラの安い新人を起用せざるを得なくなるのです。作品の出来を考えるならば、演技力に乏しい声優を起用することは避けたいところですが、そうも言ってられないのです。

そういった条件の中で出来ることといったら新人の中でもできるだけイメージに近い声を持ち、なるべく演技力のある人材を選ぶということしかありません。どれだけ評判の悪い声優であっても周囲に望まれて、期待されて起用されているのです。「今はまだ未熟でも場数を踏めば良くなっていくはず……」「演技経験はそこそこあるから慣れればなんとか……」といった、願望もあったかも知れません。

最悪、「見込み違いだった。失敗した!」というケースも考えられますが、最初に期待されて起用されたことには間違いはないでしょう。とにかく担当声優として選ばれたからには、視聴者に何を言われようと死に物狂いで頑張るべきだと思います。最初はダメダメでも後半良くなっていった声優の例は過去にもありますので、腐らずにこのチャンスを生かしていただきたいものです。
視聴者的には、できれば新人は新人らしく、端役から経験を積んでもらって、主役は実力派を起用していただきたいと切に願う次第。結局納得できるキャスティングを目指すとなれば、そうするしかない気がしています。

念のため書いておきますが、アニメのキャスティングは、ほとんどが厳密なオーディションを経て決定されています。キャラクターに一番合う声を選ぶ際に、声優の知名度が影響するということは本来ならばあり得ないことです。クオリティを重視して、時には予算度外視のキャスティングが組まれることさえあります。今回あげた例は、あくまで“失敗したと思われるケース”で考えられる原因です。アニメ業界の人達が一番に考えていることは、やはりより良い“作品”づくりですので誤解されませんようお願いいたします。

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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