【IT革命児】ムーアの法則で有名!Intel創設者「ゴードン・ムーア」


パソコン向けのプロセッサーの製造・提供で知られる「Intel」は、市場を牽引する大手半導体メーカーだ。テレビのコマーシャルでも「Intel Inside」というキャッチフレーズを耳にしたり、パソコンに「Intel Inside」というロゴマークを目にした人も多いだろう。

いまでこそ、巨大企業として君臨するIntelも、そのはじまりは、ゴードン・ムーア氏とロバート・ノイス氏、アンドルー・グローヴ氏の3人の共同設立会社からスタートしている。
※1 Gordon E. Moore氏

Intelはどのような経緯で、これほどまでの大企業に成長したのだろうか? ムーアの法則で知られるIntelの創業者 ゴードン・ムーア氏の半生とともに、Intelの歴史を振り返ってみよう。


■化学者からIntel創業者になるまで
ゴードン・ムーア氏は1929年1月3日、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコで産声をあげた。

●化学は爆発だ
ムーア氏が初めて科学に興味を持ったのは、11歳の頃に近所の子どもがクリスマスプレゼントにもらった科学実験セットだったという。化学が爆発に関係していることに大いに興味を持った彼は、自宅に大きな実験室を作り、そこでニトログリセリンなどの爆薬を作りながら化学への知識を深めていったというから驚きだ。

子どもの頃から化学に興味を持っていた彼は1946年、サンノゼ州立大学に2年間通ったのちカリフォルニア大学バークレー校に編入し、1950年に化学の学士を取得している。1954年にはカリフォルニア工科大学で化学と物理の博士号も取得した。

1953年、ジョンズ・ポプキンス大学の応用物理研究所に物理化学の基礎研究を行う研究員として入所。1956年にショックレー半導体研究所※2に入所してシリコンプロセス技術と初めて出会うことになる。
※2 トランジスタ発明者の1人のウィリアム・ショックレー博士が設立した研究所


●起業家に転身
1957年、ショックレー半導体研究所で勤めていた7人の技術者とともに同研究所を離れ、フェアチャイルド半導体社を設立。同社は拡散型シリコントランジスタの開発と生産を目的とした会社だが、その種の半導体は研究段階であり、商用品はなかった。

ムーア氏は1968年、フェアチャイルド半導体社の親会社との経営上の対立から同社を離れ、ロバート・ノイス氏やアンドルー・グローヴ氏とともにIntel社を設立して同社の副社長を務める。1975年には社長 兼 CEO(最高執行責任者)に就任した。

ちなみに「Intel」という社名は、「Integrated Electronics(集積電子技術)」の略称が由来とされている。


●ムーアの法則
ゴードン・ムーア氏は、Intel社の創業者であると同時に、「ムーアの法則」と呼ばれる有名な法則を提唱した人物でもある。ムーアの法則とは、半導体産業のガイドライン的な役割を果たす名言で、1965年に経験則として提唱された。
要約すると、

「半導体の集積密度は18〜24ヶ月で2倍の記録容量になる」

というものだ。ムーアの法則は現在でも成立しているとされており、半導体のパフォーマンスを予測するひとつの指標としても広く採用されている。

そんなムーアの法則も半導体技術の進歩とともに、近年では限界に近づいているといわれている。同法則は半導体の微細加工技術の発展を根拠としているため、微細化が原子レベルにまで達する2010年には、ムーアの法則が適用できなくなる可能性が高いのだ。


■Intel社とCPUの発展
ゴードン・ムーア氏が創設したIntel社は、どのように発展し、業界に受け入れられていったのだろうか。Intel社の歩みを見てみよう。

●半導体からCPUへ
1968年に設立されたIntel社は1969年、64ビットのSRAM 3101を開発する。1970年には世界初のDRAM 1103を発売。1971年にUV-EPROM 1702を発表し、同年11月15日、世界初のCPU 4004を完成させた。4004は2,300個のトランジスタを集積した4ビットのCPUで、動作クロックも741KHzだったが、当時としては画期的な大発明であった。

その3年後の1974年4月1日には8080※3、1978年6月8日には8086※4を、1979年には8086の後継となる8088を発表。
よく知られているように、8088は初代IBM PCに採用されたCPUであり、同機種が成功を収めたことが、Intel社が飛躍的に成長する直接のキッカケとなった。
※3 8ビット、500KHz、トランジスタ4,800個
※4 16bビット、5MHz、トランジスタ2万9,000個

Intel社は、1990年代後半から現在に至るまで世界1位の半導体メーカーであり、プロセッサーでは72%〜87%のシェアを保持し続けている。


●ニセCPUが出まわる事件も
最近は偽装食品が記憶に新しいが、食品に限らず、CPUにも偽物が出回っている。偽物といっても、実は本物だからややこしい。同じタイプのCPUでは、クロック周波数が高いほど、高速な処理が可能だ。CPは同じ製造プロセスでも個体差があり、高いクロック周波数で安定動作しないCPUは、安定動作する低い周波数のCPUとして販売される。

それに目をつけた一部の業者は、低い周波数のCPUを高い周波数で動作するCPUと偽って販売していた。具体的な手口としては、パッケージ表面の型番を消し、高性能なCPUの型番を印刷するというものだ。

ニセCPU対策には当初、CPUパッケージのSECC化※5やSEPP化※6が行われたが、今日では複製が困難なホログラムシールをパッケージに貼り付けることで、ニセCPUの氾濫を防止している。
※5 Single Edge Contact Cartridge
※6 Single Edge Processor Package


●クロック競争からマルチコア競争へ
Intel社の事実上のライバルといえば、AMD社を置いてほかにはないであろう。ライバルよりも優秀なCPUを作ることが、競争が厳しいコンピューター業界で生き残るもっとも有効な手段であり、両者は熾烈な闘いを繰り広げている。

同じ半導体プロセスのCPUであれば、クロック周波数が高いCPUほど高速だ。ところが、CPUの動作クロックが高いと、それに伴い消費電力も大きくなるうえ、CPU自体の発熱量も増してしまう。かつての自動車がそうであったのと同じように、CPUの動作クロック周波数にも限界に到達しつつあり、高いクロック周波数で動作するCPUには高性能な冷却ファンまたは冷却装置を取り付けなければ、安定した動作が望めない状況となった。

この難問を解決する手段のひとつがマルチコアだ。マルチコアとは、「CPUコア」と呼ばれる演算処理を担う部分をひとつから複数にしたもので、今日のデスクトップパソコンでは、CPUコアが2つある「デュアルコア」、同コアが4つある「クアッドコア」が主流となりつつある。

マルチコアの考え方は単純だ。ある仕事があった場合、クロック競争のときは速く処理することだけを考えていた。マルチコアでは、その仕事を複数のCPUコアで並列に処理することで、CPUの処理を高速化させようというものだ。有能な社員がひとりで仕事をこなすことから、そこそこ有能な社員が2人(デュアルコア)または4人(クアッドコア)で仕事を処理しようという訳だ。

その結果、マルチコアは消費電力と発熱を抑えながら低い周波数でも処理能力を向上させることに成功した。Intel社とAMD社は、どちらもマルチコアのCPUを提供しているが、現状、いち早くマルチコアを実現したIntel社が一歩リードしている状態だ。


このようなCPUの競争は、どこまで続くのだろうか。研究の限界について、ゴードン・ムーア氏はどう思っているのであろう。彼は、次のように語っている。

「研究者の良心に従って言えば、限界がどこにあるかは名言できない。
ただ、2009年までは現在の半導体技術の延長で微細化を進めることができる。」ゴードン・ムーア


ムーアの法則が敗れるかもしれない2010年を、我々は目の当たりにすることができる。



参考
ゴードン・ムーア | ムーアの法則 - ウィキペディア
2年ごとのCPUアーキテクチャ更新でシェア奪還を目指すインテル - ITmedia
Excerpts from A Conversation with Gordon Moore: Moore’s Law(英文/PDF形式) - Intel
Intel Executive Biography(英文) - Intel


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編集部:関口哲司
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