【カオス通信】インベーダーゲームが現代に与えたもの


日曜夜に放送中の「NHKアーカイブス」は、NHKが過去に放送した番組を再放送する番組であります。先日、この番組で“インベーダーブーム”を取り上げたドキュメンタリーが再放送されていました。これが非常に面白く、現代にも通じるものが見受けられましたので、ご紹介してみます。

■ルポルタージュ にっぽん「インベーダー作戦」(再放送)
本放送年月日:1979年(昭和54年)6月23日
リポーター:邦光史郎(作家)

番組は「スペースインベーダー」(元祖タイトー製)のインベーダーたちが次々に撃たれていくところから始まります。そこから画面は新宿歌舞伎町に切り替わり、「ルポルタージュ にっぽん」のタイトルテロップがドーン。バックにはルパン三世のBGMっぽい音楽が流れます(もしかして音楽=山下毅雄?)。ネオン輝く歌舞伎町を行き交う人々、そしてインベーダーハウスでゲームに興じる大人達が映し出されていきます。薄暗い室内に「スペースインベーダー」のテーブル型筐体が大量に並べられている光景は圧巻。

■作家・邦光史郎氏がインベーダーゲームをナビゲート
リポーターの作家・邦光史郎氏は、企業小説などで活躍した人物です。著書に「小説松下幸之助」(日本実業出版社)「小説トヨタ王国」(集英社)などがあります。その邦光氏が冒頭でゲームに興じ、以下のようなナレーションを語ります。

「私が今やっておりますのは、“インベーダーゲーム”であります。この“インベーダー”というのは、“侵略者”という意味だそうであります。この新しい侵略者は、たちまちの内に日本中に流行いたしまして、ただいま大変なブームを呼んでおります。このインベーダーゲームがどうして若者たちの心をとらえ、ブームを呼んだのか。そして同時に、このインベーダーゲームのブームを演出したアミューズメント産業の実体を少しルポしてみたいと思っております」

■インベーダーゲームを楽しむ若者たちのコメントも流れます。
(男性)「最初はちょっとバカにしてたんですね。で、冗談で最初やったんですけどね。やっていくうちにね、なんかね、非常にキザに言えば、純粋に勝負だけ、点数だけ追っかけられるっていうね、ある種の一時昔流行ったんですけどね、“無償の恋”みたいなね」

(女性)「ストレス解消にはいいんですよ。面白いです。仕事で頭がちょっとアレした時にやって、また仕事するとか。会社にありますから。社長が入れようって言ったんです。部長もやってるんです、仕事の合間に(笑)」

無償の恋とか、会社で購入して社長や社員が遊んでるとか、凄い状況です。ゲームのスコア表示も映ってましたが、その点数は580点でした。ちなみにハイスコアは1万1910点。たまたま映った台のハイスコアとはいえ、今のゲームと比較すると、あまりにもささやかな点数であります。ちなみに現在ゲーセンで稼働中のシューティング「オトメディウス」の全国ハイスコアは380万点台。弾幕シューティングの「デススマイルズ」は4〜5億点台なので、まさにケタ違い。

■邦光氏はさらに、ゲームの業者側にも注目していきます。
「このインベーダー、日本に現れたのはごく新しく、昨年(1978年)6月のことでした。開発したのは東京の某メーカーで、昨年秋に開かれたアミューズメントマシンショーに出品しまして、大変人気を得たと言います」

映し出されたアミューズメントマシンショーの写真の中には、「スペースインベーダー」のポスターの写真がありました。そこには「翔んでるニューサウンド!!」という、いかにも昭和なキャッチコピーが踊っています。また、インベーダーと一緒にディスコサウンドで踊る若者たちのイラストも描かれるという、なんとも珍妙な組み合わせ。ちなみに若者たちのアフロ率が妙に高くなってました。

「(インベーダーは)またたく間に喫茶店やレストランなどに広まりまして、専門店まで現れることになりました。ちなみに新宿歌舞伎町界隈ではパチンコ店10軒に対して、インベーダー店が45軒もあるといわれております」

街にあるインベーダーハウスの看板には“24時間営業”の文字が躍っています。パチンコ店よりもインベーダー店のほうが多かったというのは、今では想像できませんが、これは“インベーダーブーム”がどれほど勢いがあったものかを示す例だと思います。

「100円玉不足で日銀が悲鳴を上げたとか、あるいは1個100円足らずであった集積回路が2千円に跳ね上がって、IC不足のため、電子業界は困っているとかいう噂まで出ております」
「店に置いておくだけで1日1万円収入がある。いや2万円儲かるという話が出まして、ブームはどんどん加熱していきました」

新聞に「資金15万即開業!!」という広告が掲載されてました。15万円で開業というところに、当時と今との物価のギャップを感じます。新聞にはさらに「明日では遅すぎる 今すぐに機械入手こそ先決」「- 最高の内職 - コイン商売 ヒル寝していても機械が稼ぐ」という文字も踊っています。それにしても"ヒル寝"という表記のセンスが謎すぎ……。

さらにカメラは、インベーダーゲームのコピー品(改造品?)を制作する現場に潜入し、業者のコメントをとらえます。

(コピー業者)「上手くなると終わりがないと。無制限に遊べると。要するに今までのゲーム機、インベーダーですと、それが一番ネックだったわけですね。お客様が喜ぶ機械と、それからオーナーですね。要するにお店側が喜ぶ機械は別だということですよ。コンピューターが4段階、オートマチックに切り替わると。BクラスからCクラスに行くと、インベーダーの攻撃の弾が多くなると。ま、こういった機械を今度作ったわけです。特許ですか? 特許というものはまず“文章”と同じと考えてよろしいんじゃないですか? 小説を丸々そのまんま使ったらこれは著作権侵害ですよね。それを丸々やらなければいいわけですよね」

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