【気になるトレンド用語】鉛害撲滅へ、鉛の怖さと鉛ゼロ化を実現した理由


環境への配慮が問題となって久しいですが、企業の環境問題の取り組みも知らない間に進められています。ときどきニュースや製品などで見かける「鉛ゼロ使用」。これも環境問題への企業が取り組んでいる問題の一つです。

しかし、なぜ鉛を使っていないことが重要なのでしょうか。鉛を使用することでどのような不都合があるのでしょうか。何となく体に悪そうなイメージだけが広まっていて、具体的なところは良く分かりませんね。また、鉛不使用に対する取り組みについても意識している人も少ないと思います。

今回は、企業が取り組んでいる環境問題“鉛フリー”化について見ていきましょう。

■鉛について知りましょう
ご存じの通り、鉛は金属元素です。元素記号は 「Pb」 、原子番号は 「82」で表されます。
人間とのかかわりは古く、柔らかく加工が容易であるために古代ローマではグラスなど日用品品として使用されていました。日本でも弥生時代より鉛ガラスが用いられています。

鉛の主な用途は、次のようなものがあります。
・鉛蓄電池の電極
・金属の快削性向上のための合金成分
・光学レンズ
・ブラウン管用ガラス
・美術工芸品
・防音・制振シート
・銃弾
・釣りの錘(おもり)
・放射線遮蔽材

■鉛による害とは
鉛は自然界に元々存在する物質であり、それだけでは環境に害があるとはいえません。しかし、人体に対しては有害物質であることも知られています。

鉛は食材にも存在しますが、通常の状態であれば尿と一緒に排泄されるために必要以上の鉛が体内に蓄積することはありません。四エチル鉛のような有機化合物を摂取してしまったり、何らかの体質・代謝の異常により鉛が排泄できず大量の鉛を蓄積すると毒性を持つようになります。

呼吸器系統や消化器系統から人体に吸収されると腹痛や貧血などの「鉛中毒」の症状が現れます。鉛は最終的には骨と結びついて長く人体に蓄積されます。幼児の「慢性鉛中毒」は、大脳の成熟障害や精神薄弱や骨発育障害などを引き起こします。アメリカにおける調査報告(David research center)では7歳児の血中鉛濃度が高い児童はIQ値が低いという結果も報告されています。

■生活の中で広まった鉛害
古代ギリシャのヒポクラテスの記述から古代ローマ時代は膨大な量の鉛が生産され、陶磁器の上薬、料理器具、配管などにも使われていました。このためローマ人には死産、奇形、脳障害といった鉛中毒が一般的だったと考えられています。現代の日本では、1970年代まで水道の家庭への引き込み管に鉛製の水道管が使われていたことから水道水に含まれる鉛が問題となり、浄水器などが売られています。

このような直接体内に摂取することのほか、昔のオクタン価向上のために鉛を混入していたガソリンを使用した自動車の排ガスから鉛が空気、土壌、水に溶け込み危険な状態になりました。

■鉛フリー化への経緯
鉛を生活空間から減らす取り組みは、全人類の環境問題への意識の高まりが原動力となっているといえるでしょう。消費者の環境に優しい製品への関心が高くなったことが、メーカーの鉛フリー化への取り組みを進めたとも考えられます。

世界的には1992年にリオの地球サミットで、「アジェンダ21」「リオ宣言」が採択され環境問題が国際共通の認識となりました。これらがきっかけとなり、有害物質の汚染が大きいEU(欧州連合)でWEEE・RoHs指令が発令され、現在の基準となっています。鉛は、その中で有害6物質の一つに指定されているのです。(鉛・水銀・カドミウム・6価クロム・PBB・PBDE)

■鉛フリー化への取り組み
現代の電子技術に不可欠なハンダにも鉛が使用されてきました。鉛ハンダを使っているすべての製品(電化製品・自動車など)は、通常で使用しているときには問題はありません。ところがその製品を廃棄するとどうなるでしょうか。

廃棄物が酸性雨にさらされますと、ハンダ中の鉛が溶けて地下水にや地中に浸透することで飲料水として人体に入るほか、野菜・家畜・魚などを通して高濃度に蓄積されて人体に入ることになります。

このように製品に鉛が使用されていますと、結局は環境汚染となり、人体に鉛害をもたらすことになるため、最近はIT・家電製品などで鉛フリーのハンダが使われるようになりました。

EUでは、鉛は“RoHs指令”で電気製品に使用してはならない有害6物質の一つと指定されており、2006年7月1日以降、この規制内容を守らない製品はEU諸国で販売できなくなりました。その後、EUの“RoHs指令”を基準として各国でも同様な規制が始まることになります。

こうして2006年までに鉛フリー化を実行しなければ、製品を国内外を問わず販売できない状況が生まれたことで、国内では1998年12月に施行された『特定家電用機器再商品化法』 (通称、家電リサイクル法)により、3年間の準備期間後の2001年から製造業者及び小売業者への義務付けが行われています。半導体の巨人インテル社も、45nm 世代の High-k プロセッサー・テクノロジーでは 100% 鉛フリー化を達成しています。そのほか多くの企業でも盛んに、半導体製品の鉛フリー化に積極的に取り組んでいます。

■国際基準が世界の企業を変える
現代のように国際化された社会の企業では国際基準に対応することは避けられない問題です。
また、環境マネジメントシステム(EMS)が普及したことで、多くの企業がISO14000の認証を取得し、あるいは自社基準での運用を実施しています。

今後は、企業にとって消費者にアピールできる環境問題への取り組みは、今以上に重要視されていくでしょう。

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