【世界のモバイル】国境を越えはじめた通信サービス!日本以外の世界が繋がる「国際ローミング」の新しい潮流


普段自分が使っている携帯電話をそのまま海外に持ち出して利用できる、そんな便利なサービスが"国際ローミングサービス"だ。日本でも利用者が増えてきているが、海外の多くの国では何年も前から一般的なサービスであり、海外渡航時に携帯電話を持っていくことは、"あたりまえ"のものとなっている。

非常に便利なサービスなのだが、海外利用時のローミング料金は国内料金より割高な上、着信料がかかったり、パケット定額が利用できないなど、利用するには注意が必要である。頻繁に海外渡航するビジネスマンなどにとっては毎月のローミング請求額が頭痛の種になっていることもあるだろう。これは日本だけではなく海外でも同様で、EUではローミング料金の規制化の動きも出てきている。

一方、国を越えた通信キャリア間の連携により国際ローミングの費用を低減化させ、さらに便利なものにするサービスも海外ではいくつか開始されている。今回はその1つを紹介しよう。

■複数国の電話番号を1台の携帯で利用できる!香港の便利なサービス

香港の通信キャリアCSLが提供している「JustOne Card」サービスは、1枚のSIMカードに複数の国の電話番号を追加できる便利なサービスだ。日本でもドコモが1枚のFOMAカードで2つの電話番号を利用できる「マルチナンバー」を提供しているが、これは日本の電話番号の話。CSLのサービスは他国の番号を、しかも最大4つまで複数同時に利用できるのだ。サービス概要は、以下の通りである。

・1枚のSIMカード(香港の電話番号)に、中国、台湾、マカオの番号を追加可能
・それぞれの渡航先での発信は現地番号で行える
・どの国の電話番号も常時待ち受け状態可能
・どの国の電話番号でも、どの国でも着信可能
・各国での料金は国際ローミング料金より安い

たとえば香港と中国を頻繁に往来するビジネスマンは、以下のような携帯電話の使い方が一般的だ。

(1) 香港の携帯電話をそのまま持って行き、中国内で国際ローミング利用する
(2) 中国では携帯電話のSIMカードを中国のものと入れ替え、中国の電話番号で利用する
(3) 香港の携帯電話に加え、中国の携帯電話も持っていく

(1)は最も手軽だが、渡航先での利用はすべて国際ローミングとなるため、費用が割高となってしまう。(2)は渡航先の料金は現地回線のため割安だが、普段使っている携帯電話にかかってきた電話やSMSを受けることができない。またそもそも現地回線の入手が困難な場合もある。(3)は、(1)と(2)の欠点をカバーできるが、携帯電話を2台持ち歩かなくてはならない。このようにそれぞれの方法には一長一短があるのだ。
写真:(左)香港のSIMカードの入った携帯を持っていく。(中)中国到着後、中国のSIMカードに入れ替える。(右)香港と中国、それぞれのSIMカードの入った携帯電話を2台持って行く

■海外渡航時のコスト削減と使い勝手を向上

JustOne Cardを利用すると、1枚のSIMカードに最大4カ国の電話番号を入れることができるので、例えば香港と中国の電話番号を入れれば、1台の携帯電話で両国の電話番号を同時に扱うことができるのだ。しかも香港内では香港の番号として発信され、中国内では中国の番号として発信できる。このため中国出張中、わざわざ2台の携帯電話を持たずとも1台の携帯電話が2台分の働きをしてくれるのだ。
写真:JustOne Cardを利用すると、最大で4つ国のSIMカードが1枚のSIMカードに集約できる

なお海外の電話番号を追加したといっても、現地での料金は現地ローカル料金と同等にはならない。これは現地通信キャリアと直接契約するのではなく間にCSLが入りサービスを提供するからである。それでも国際ローミングと比較すると着信で1/4、発信でも約半分と現地料金には及ばないものの大幅に通信コストを削減することが可能になるのだ。なお他に基本料金が1番号追加で約1,500円/月、それ以降の追加は約750円/番号・月がかかる。

(表)香港から中国へ渡航した際の電話料金比較(日本円概算)
単位/分国際ローミングJustOne Card現地料金(一例)
着信120円30円5〜20円
国内発信50円30円5〜20円
香港着信100円50円20〜30円


このように海外渡航先での通信料金を大幅に節約できるJustOne Cardサービスだが、追加した番号をどこの国でも利用できるというメリットも忘れてはならない。たとえば香港の電話番号に中国の番号を追加した場合、中国滞在中に香港/中国どちらの電話番号にかかってきても着信できるのはもちろんのこと、香港に戻ってきてから、あるいはシンガポールや日本など他の国へ渡航し、その国で国際ローミングを利用している時でさえも、同様に香港/中国どちらの電話番号も利用できるのだ。台湾やマカオの電話番号を追加しても同様だ。たとえば中国の取引先には中国の電話番号を伝えておけば、先方は中国内に国内電話するだけで、こちらがどの国にいても先方からの電話を受けることができるのだ。

●日本で"JustOne Card"サービスが利用できたら?
イメージをわかりやすくするために、このサービスが日本にも適用された場合の事例を考えてみよう。日本を訪れた取引先の外国人や、大学で知り合った海外留学生から「これが私の電話番号、いつでも連絡してよい」と自分の携帯電話の番号を渡された時、その番号がアメリカの番号であったら電話をかけることをためらってしまうかもしれないだろう。しかし連絡先が日本の電話番号であれば気軽に電話しようと思えるはずだ。すなわちJustOne Cardは国際ローミングで"現地で電話が使える"というレベルからさらに踏み込み、"現地の番号が使え、現地でのコミュニケーションがより潤滑になる"という利便性あるサービスでもあるのだ。

■国際ローミングサービス後発の日本、同様なサービスが望まれる

アジアではドコモや韓国KTFなど、8カ国の通信キャリア連合「CONEXUS Mobile Alliance」が2006年12月に結成され、今後各社間での国際ローミング提携強化などが予定されている。しかし、すでに同様の提携は2004年に結成されたアジア9カ国の通信キャリア連合「Bridge Mobile Alliance」により、ローミング料金低減やホットスポットの開放、コンシェルジェサービスなどが提供されている。そして同アライアンスに参加しているCSLや台湾Taiwan MobileなどによりJustOne Cardのような便利な国際サービスも実現されているのだ。

もちろん国際ローミング料金が安くなるにこしたことはない。またドコモのように、毎月の無料通話分を国際ローミング時にも利用できる料金体系は世界でも珍しく、先進的なサービスと言える。しかしJustOne Cardの"現地番号を使える"という利便性は、料金以上にメリットの大きいものだ。国際ローミングサービスに遅れを取ったドコモとKTFの間だけでも、数の多い両国間を行き来する渡航者のために、より使い勝手の良い国際サービスが早急に提供されることを望みたい。


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山根康宏
香港在住の海外携帯電話マニア&研究家
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