【カオス通信】海原雄山も″パパ″になれる?″カリスマ育児″の衝撃
購入後の帰りにデニーズで晩メシを食べながら、時間つぶしに読書を開始。ところがこれが読み始めたら止まらない! 運ばれてきた料理の味もわからなくなるほど夢中になり、近年まれに見る集中力を発揮して一気に完読してしまいました。実体験をネタにしたマンガは過去に山ほど読んできましたが、これはその中でも5本の指に入る傑作だったのです。こんなに面白いのに、世間での注目度が低いというのは、やはり納得いきません。そこで今回はこの場を借りて、この作品のご紹介をしていきたいと思います。
このマンガは、お父さん(榎本俊二氏)の主観で、育児の実態がエッセイ形式で描かれていきます。まえがきで本人が「タイトルに『カリスマ』と堂々と謳ってますけど、これはまったくの事実無根で、自分で言うのもなんですが、四六時中とっても腰が引けまくりの一大おろおろ絵巻となっています」と語っているように、お父さんは常に困っています。オムツの替え方が分からなくて首を吊りたくなったり、妻が入院中の保護者会で自分だけ男で浮きまくったり、第一志望の保育園が倍率70倍の難関と知って愕然としたりと、もう大変。
お父さんの苦難は、その後さらに続き、子供がアトピーにかかって1日3回の入浴と飲み薬&塗り薬の使用を義務づけられたり、肺を鍛えてゼンソクを克服しようと水泳を始めたらプールの塩素でアトピーが促進されたり、近所の小児科医がとんでもないヤブ医者だったりと、心配のタネは尽きることがありません。
基本がギャグマンガだけに色々と誇張はされていますが、実体験を元ネタにしているだけに驚くほど説得力があります。さらに榎本俊二氏独特の不条理センスによって、普段見えない"お父さんの本音"が実に上手く表現されています。
例えば、妻から"育児参加要請"のプレッシャーを感じるシーンで、お父さんは妻の脳裏に浮かぶ「家事」「育児」「学校行事」「腰もみ」といった言葉をキャッチして、「わー考えていることが全てわかるー」と自分のテレパシー能力に動揺したりします。他にも、男の教科書には「育児」という文字は載ってない!と言ったところ、キレた妻にライターで火をつけられて全身を燃やされるシーンなどもこの作品ならでは。本当なら大事件ですが、この作品の中ではギャグとして昇華されているので、不思議とほのぼのできてしまうのです。
『ゴールデンラッキー』に始まり『えの素』で確立した"榎本イズム"が、育児マンガというジャンルで開花するなど、いったい誰が予想できたでしょう。これは昔からのファンにとっては、非常に感慨深いものがあります。いい意味で裏切られてしまいました。
ところで、育児の前にはまず出産があります。本作では子供を産む側のお母さんの苦労もちゃんと描かれています。出産を控えての禁煙に苦しんだり、もの凄い勢いで情緒不安定になったり、陣痛促進剤で苦しんだり、激痛が伴う研修医の点滴交換に悲鳴を上げたりとしょっちゅう泣いています。病院関連のネタは結構多く、中には当事者となったら笑ってすませられない話もあって、つくづく病院は選ぶものであるということを痛感させられます。
- 1