国際福祉機器展2018:視覚障がい者向けの点字ディスプレイや多言語翻訳に対応したスマホなど向けアプリなど。会場内で見かけたモバイル関連をまとめて紹介【レポート】



国際福祉機器展2018会場内で見つけたモバイル関連アイテムやソリューションをまとめて紹介!

東京ビッグサイト(東京・お台場)にて10月10〜12日まで開催されていた約550の企業・団体が出展するアジア最大級の福祉・医療関連展示会「第45回 国際福祉機器展 H.C.R.2018(International Home Care & Rehabilitation Exhibition 2018)」(主催:全国社会福祉協議会および保健福祉広報協会)。

前々回と前回の2回に渡って同展示会に出展していたNTTドコモと富士通の共同ブースのレポートをお送りしてきましたが、今回は会場内のその他のブースにて見つけたモバイル関連やスマートフォン(スマホ)に対応したアイテムやアプリなどをまとめて紹介していこうと思います。

こういった福祉・医療関連の展示会でないとなかなか目にすることのできないアイテムやアプリたちに注目してみてください。

【日本テレソフトブース】

・文字入力機能付き点字ディスプレイ「Seikaシリーズ」

まずは点字プリンターや拡大読書器などの視覚障がい者向け日用生活用具を開発・販売している日本テレソフトのブースです。

ここではスマホやタブレットへ接続して利用する文字入力機能搭載の点字ピンディスプレイシリーズ「Seika 6Pro」(清華6Pro)が展示されていました。


日本テレソフト入力機能搭載点字ディスプレイ「Seika 6Pro」(非課税298,000円)

Seika 6Proは日本テレソフトが開発・販売しているUSB・Bluetoothでパソコン(PC)やスマホ、タブレットなどなどに接続して利用する点字ディスプレイで、本機だけで点字の表示(読み)および入力(書き)を行うことができます。


点字は指で読むものなので、実際に点の凸で表示できるようになっている



ファンクションキーやジョイスティックキー(トラックポイント)も付いており、カーソル操作も可能

USBまたはBluetooth接続にてPCやスマホ、タブレットなどに接続して画面内の文字を点字に変化して表示したり点字入力機能を使ってメールやメッセージなどを作成することも可能です。なお、デバイス側は本機をHIDデバイスと認識するため、Bluetooth接続の場合はOSを問わず利用可能です。

また、USBメモリーとmicroSDカードスロットを搭載しており、本機だけで文章(点字)データをはじめ、複数の種類のファイルを保存可能で、データをPCや端末と相互にやりとりができます。


Seika 6Proの左側面(画像=左)と右側面(画像=右)

左側面にはmicroSDカードスロットとフルサイズのUSB端子、右側面には電源スイッチとminiUSB端子およびACアダプター接続用DCIN端子(ともに電源供給用)があります。

電源の供給を受けるための端子が2種類別々にあるのは、屋外や室内での利用などの異なる利用シーンの利便性を考慮してのことだそうです。

また、本機はiOSの内蔵機能である「Voice Over」へのフル対応を謳っており、iPhoneやiPadであれば、さらに連携度を高めた活用が可能になるということです。

もちろん、HID接続で利用可能な周辺機器なので、Windows(通常のWindows PCはもちろん、Windows Phoneなども可)やAndroidでもしっかり使うことができます。

なお、ブース内には持ち歩きの邪魔にならないポケットサイズの軽量小型モデル「Seika mini」も展示されていました。


小型モデルのSeika mini(非課税158,000円)


【シャムロック・レコードブース】

・多言語対応のリアルタイム翻訳アプリ「UDトーク」

障がい者向けに限らないツール系のスマホ向けアプリを多数開発しているシャムロック・レコードのブースでは幅広い言語を音声認識を自動翻訳し、読み上げまでしてくれるコミュニケーションサポートアプリ「UDトーク」を展示していました。


AndroidおよびiOS向けリアルタイム翻訳アプリ

UDトークはシャムロック・レコードが開発したコミュニケーション支援アプリを謳う翻訳アプリで、スマホやタブレットに話しかけた言葉をリアルタイムに翻訳し、文章で表示してくれます。

翻訳に対応した言語の多さとさまざまな表示モードが可能な多機能さが特徴で、英語や韓国語、広東語といった日本人から見てメジャーどころの言語からクメール語、タガログ語にウズベク語などの多くの言語を回線速度に多少の依存はあるものの、ほとんどタイムラグなしに指定の言語で文章変換されます。


この多芸さと対応言語の数は魅力的

説明員によると、翻訳精度と使いやすさが評価され、大使館の記者発表などで他国向けへ発表内容を表示するのに採用されるなどの実績があるそうことです。

表示モードの多さも利用シーンに応じて自由に選択が可能で、大画面モニターやプロジェクターなどで表示して発表会やプレゼンテーション向けのレイアウトでリアルタイム翻訳をおこなったり、ARモードでちょっと昔のゲーム画面のような表示にしたりと工夫とアイディアで色々な使い方ができそうです。




アドベンチャーゲーム風のレイアウトだったり、インカメラ画像同時に表示しながらの翻訳の文章が表示されるなど、表示方法は多彩。そして(近くにスマホにアプリ入れたデモ機があったのに)わざわざiPadでARモードをデモンストレーションしてくれた説明員の方(画像=右下)

もうひとつ、ユニークな機能として日本語で文章表示する際に「大阪弁」で表示するジョーク機能があります。かなりふわっとした大阪弁の表現と思われますが、ちょっとした話のネタにできるかもしれません。


こういう無駄機能は筆者は大好き

UDトークは基本無料(一部有料プランあり)で一通りの機能を実際に利用できるので、海外渡航のお供に役立つかもしれません。介護関連の展示会に出展されていたアプリですが、色々なシーンで役立てるのではないでしょうか。まず、実際に試してみましょう!

【ソルクシーズブース】

・プライバシーに配慮した見守り支援システム「いまイルモ」

主に法人向けのビジネスソリューションを開発・提供しているソルクシーズのブースではプライバシーに配慮し、多くのセンサーを活用した見守り支援システム「いまイルモ」を展示していました。


見守り支援システム「いまイルモ」

いまイルモはカメラを搭載せず、照度センサーや温度・湿度センサーなどの環境センサーを用いた見守り端末で、高齢者の居室および在宅状況を把握するというものです。


いまイルモの概要(画像=左)と搭載している各種センサー(画像=右)

いまイルモの見守り端末は有線LANまたは3G(W-CDMA)でネットワークへ接続し、センサーに振動や居室の照明が点く(消える)とセンサーが反応し、見守りのモニター側の端末にグラフなどで表示されます。


いまイルモのマスターセンサー。左側面にSIMカードスロットが配置

さらにマスターセンサーに連携可能なベッド下に入れる微動センサーやドアにセットするドアセンサーなども用意されています。


微動センサー(画像=左)とドアセンサー(画像=右)



居室内の環境や在宅状況までを推測可能なグラフでのリアルタイム情報が取得可能

センサー本体が単体でWANに接続可能(有線LANにも対応)なので、配線の手間もなく簡単に設置できるのは便利です。

高齢者の一人暮らしが増える中、こういったプライバシーに配慮したカメラ非搭載の見守りシステムはこれからも増えていくのではないでしょうか。

【EXGEL・Pharmaouestブース】

・スマホ連動型車いす用褥瘡防止マット「gaspard」(ガスパー)

座椅子や車いす用の床ずれ(褥瘡)防止クッションマットのメーカーであるEXGEL(エクスジェル)とPharmaouest(フェルマウェスト)のブースにはポジションセンサーを内蔵した車いす用の褥瘡防止クッションマット「gaspard」(ガスパー)が参考出展として展示されていました。


車いす用褥瘡防止マット「gaspard」(参考出展)

gaspardは車いす上に乗っている人のポジションと身体の動きを自動で分析し、皮膚に負担のかかる体勢となっているのを検知すると、専用アプリをあらかじめインストールしておいたスマホやタブレットに通知を送ってくれるというものです。


gaspard専用アプリの画面(現在はフランス地域のみで利用可)

gaspardとスマホはBluetoothで接続され、ポジションの監視、プッシュアップ(立ち上がり)、連続着座時間を監視することができ、車いすに座っている時間や動きの履歴を確認することができます。


gaspardの本体(通信機器とバッテリーなどが収められた部分)



コネクタは専用のものを使うがUSBで充電する

説明員によると、本機のアラートにきちんと従った車いすの利用を心がければ臀部の床ずれ(褥瘡)や圧迫をおおきく改善できるということです。

車いすの生活者は、日本でもフランスでも皮膚に問題を抱える人の割合が多く、このgaspardもフランス人の車いすを利用しているエンジニアが自分のために開発したものが製品化されたということでした。

日本国内向けには2019年の春頃に販売予定で、価格等はまだ決まっていないそうですが、国内にはまだこういった床ずれ予防を目的としたスマホ連携の福祉機器はほぼないので、期待したいですね。

長くなりましたが、国際福祉機器展2018のモバイル関連機器やアイテムを出展していたブースをまとめてお送りいたしました。

今年のブース展示を振り返ると、福祉・医療機器にもモバイル端末やネットワークが活用されるものが年々、増えてきているなと感じます。

今すぐに必要というものはなかなかないかもしれませんが、モバイル関連技術を活用したこういった製品や技術があるというのを、知る良い機会でした。

記事執筆:河童丸



アプリ名:UDトーク - コミュニケーション支援アプリ
価格:無料(アプリ内購入あり)
カテゴリ: ライフスタイル

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