ソニー、Xperiaスマホが劣後していたことを認める!中期経営方針を発表し、新体制で開発スピードを改善して唯一の赤字部門であるモバイルコミュニケーション事業の黒字化めざす




ソニーは22日、2018〜2020年度中期経営方針(第三次中期経営計画)を発表しました。また合わせて同日、投資家向けに経営方針説明会「Sony IR Day 2018」を都内にて開催し、各事業分野別に詳細な現在の状況および今後の取り組みを説明しました。

同社では今年4月に平井一夫氏から吉田憲一郎氏に代表取締役社長をバトンタッチし、新体制の元で今年度からの3カ年計画として第三次中期経営計画を実施していきます。

全体としては平井氏が掲げた「感動」を継承しつつ、より「人に近づく」をキーワードとし、エレクトロニクスおよびエンタテインメント、金融の3つの事業領域において持続的な社会価値と高収益の創出をめざしていくとしています。

中でも最も大きな課題は2017年度における分野別では唯一の赤字となったスマートフォン(スマホ)などの「Xperia」シリーズを中心としたモバイルコミュニケーション(MC)事業だと思われます。

ソニーではその原因である販売台数の減少が「規格や設計、開発といった商品化スピードの劣後(他より劣っていること)」にあることを認め、新体制ではこれらのスピードを改善して競争力を高めていくと説明されました。

ソニーでは大きくエレクトロニクスおよびエンタテインメント、金融の3つの事業に力を入れており、新たに「人に近づく」というキーワードを追加し、「感動」を生み出すのは「人」であることからそういったクリエイターなどを重視する方針を打ち出しました。

同日に発表されたロックバンド「Queen」やシンガーソングライター「Sam Smith」などの著作権を持つEMIミュージックパブリッシングを子会社化したことや人気キャラクター「スヌーピー」が登用する漫画・アニメ「ピーナッツ」の株式取得もこういった方針の一環で、今後もコンテンツIPを強化していくとのこと。

さらにコンテンツを視聴したり、生み出したりするためにもエレクトロニクスは重要なツールだとし、ソニーブランドとして質の高い製品「ブランデッドハードウェア」を投入して安定的に高いレベルのキャッシュフローを創出する事業、すなわち持続的なキャッシュカウ事業(稼ぎ頭)とするとしています。

また半導体についても人が生きる現実世界を向き、また感動をもたらすコンテンツの創造に欠かせないイメージセンサー(CMOS)の領域で引き続きスマホなどのイメージング用途での世界No.1を維持し、さらに車載向けなどのセンシング用途でも世界No.1となるという3つの基本戦略が紹介されました。

【ソニーの2020年度における各分野の営業利益目標】
ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野1,300〜1,700億円
音楽分野1,100〜1,300億円
映画分野580〜680億円
ホームエンタテイメント&サウンド(HE&S)分野750〜1,050億円
イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野850〜1,050億円
モバイルコミュニケーション(MC)分野200〜300億円
半導体分野1,600〜2,000億円

ソニーではこのうちのエレクトロニクスはスマホを含むMC分野のほか、テレビやウォークマンなどのHE&S分野およびデジタルカメラなどのIP&S分野、そしてデジタルカメラやスマホ向けのイメージセンサーなどの半導体分野、エンタテイメントがPlaystationなどのゲームのG&NS分野や音楽分野、映画分野に分けています。

またMC分野はスマホなどのXperiaを展開するソニーモバイルコミュニケーションズ(以下、SMC)、nuroやSo-netなどのネットワークサービスを展開するソニーネットワークコミュニケーションズ(以下、SNC)の2つの子会社からなりますが、3月31日まで両社の代表取締役社長だった十時裕樹氏がソニー本体の代表取締役専務兼CFOに就任したため、MC分野の体制も変更されています。


まずソニー本体において専務としてMC事業を統括するのが、デジタルカメラなどのIP&S事業を率いてきた石塚茂樹氏で、引き続きIP&S事業を担当しつつ、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの代表取締役社長を努めながらストレージメディア事業を受け持ちます。

そのため、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの副社長にソニー執行役常務兼R&Dプラットフォーム担当の勝本徹氏と、ソニー執行役員でプロフェッショナル・ソリューション&サービス本部長兼ソニーマーケティング代表取締役社長、ソニーマーケティングジャパン執行役員社長の河野弘氏がサポートします。

一方、SMC代表取締役社長はソニー執行役員の岸田光哉氏が就き、同じくソニー執行役員の古海英之氏と手代木英彦氏がそれぞれGlobal Sales & MarketingとProduct Business GroupのEVPとなります。なお、手代木はソニーTS事業担当も兼務し、SNC代表取締役社長は高垣浩一氏が努めます。

岸田氏はソニーイーエムシーエスやソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズといった生産部門会社の代表取締役社長を努めてきた経歴を持ち、古海氏は長らくSMCのUX・商品戦略本部でXperiaの開発に携わってきました。



なぜこうした人事を説明しているかと言えば、スマホ事業において「できたこと」として「OPEX(運営コスト)」と「製品保証費用」の削減、いわゆるコスト削減が挙げられており、これはソニー銀行を立ち上げた実績で財務畑出身の吉田氏の右腕だった十時氏の実績だと言えるからです。

平井氏が2012年にソニーの社長に就任後、実際には吉田氏が副社長に迎え、十時氏が業務執行役員SVPとなった2013年から徐々に戦略が変わっており、2014年初頭までは平井氏がスマホ事業の販売台数を拡大路線で「2年度に倍増の800万台で世界シェア3位をめざす」といった発言をしていました。

しかしながら、その後に2014年11月に十時氏がSMC社長に就任し、コスト削減とともに2016年には新たに「Xperia X」シリーズに刷新し、販売台数を追わずにミッドレンジからハイエンドを中心にした利益率の高い製品に絞り、実際に2016年度はMC分野も黒字化していました。



さらに実際には2017年度も2018年度を見据えた特別損失を計上しているために赤字となりましたが、単年度では黒字となっており、昨年は海外を中心に「Xperia XZ Premium」の評価は高く、少なくとも昨年前半までは計画通りといったところではなかったかと思われます。

逆に昨年後半から今年前半についてはうまくいっておらず、課題として挙げられている販売台数の減少の大きな原因として「商品力強化の遅れ」、つまり他社が“縦長画面”や切り欠き(いわゆる「ノッチ」)を採用した“狭額縁デザイン”、デュアルカメラ・トリプルカメラといった“多眼カメラ”などのトレンドを素早く取り入れたのに対し、大きく遅れました。

ようやく今年2月に「Xperia XZ2」と「Xperia XZ2 Compact」で縦長画面、今年4月に「Xperia XZ2 Premium」でデュアルカメラを搭載した製品を発表しましたが、Xperia XZ2 Premiumの発売は遅れて今夏となっており、すでに他社はノッチやトリプルカメラなどと次のステージに進んでしまっています。



Sony IR Day 2018でMC分野の説明を行なった石塚氏も「狭額縁や大画面化、複眼カメラなどを他社が次々と取り入れたが、それらに対抗できる商品を出せなかった。」とし、「設計・商品化のスピードが劣後していることを認識している。」としつつ、今後は「そういった点を改善することが必要だ。」としました。

さらに改善点として「設計・商品化のプロセスに無駄がある。」とし、岸田氏とともにそれらの無駄にメスを入れ、組織改革などを行なって設計・商品化のリードタイムを短縮化し、中期的な商品企画力・開発力を高めていって競争力を上げていくということです。

これまでと同様に「One Sony」によるカメラやディスプレイ、オーディオなどの各技術を結集し、ブランデッドハードウェアとして「特にデザインと質感にはこだわる」としています。

またコスト削減を進めてOPEXを2020年度までにさらに30%減らし、損益分岐点を低減させた筋肉質な構造への変革を行なっていくとのことで、MC分野も2020年度には200〜300億円の黒字をめざします。なお、これには2017年度決算説明会でも説明があったように「5G」への取り組みや規模は小さいながら右肩上がりのSNCも含まれます。



記事執筆:memn0ck


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・Sony Japan | ニュースリリース | ソニー株式会社 2018〜2020年度中期経営方針
・Sony Japan | ニュースリリース | ソニー株式会社 役員人事
・Sony Japan | エレクトロニクス事業及びエンタテインメント事業の2020年度営業利益目標について(PDF)
・Sony Japan | IR Day・事業説明会

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