クリーニング店がAIを導入して無人店舗をめざすワケとは?グーグルが開催したセミナー「現場で役立つ機械学習」にて「TensorFlow」の活用事例が紹介【レポート】



画像認識がクリーニング店を変える?!Google Japanのセミナーを紹介

グーグルは4日、都内にて「現場で役立つ機械学習」と題したメディアセミナーを開催し、福岡県田川市でクリーニング店を8店舗展開するエルアンドエー 取締役副社長の田原大輔氏が独自開発したクリーニング向けの画像認識システムを紹介した。

人工知能(AI)と聞くと大企業が新しいサービスを生み出すための取り組みというイメージだが、田原氏はプログラミングを学習しながらAIを業務に取り入れているという。

今回はメディアセミナーで紹介されたクリーニング店がAIによる画像認識を導入する取り組みの背景とそのシステムについて紹介していく。



田原氏がはじめてプログラミングに挑戦したのは2013年8月、YouTubeを観て勉強しながら社内のシステムを作っていったのだという。


それまでパソコン(PC)を利用した業務を利用するのは、ITリテラシーの低い年配の方などが多く、メールの送受信やファイルの添付などは想像以上にハードルが高い。

そこで情報の共有は当時出たばかりのコミュニケーションサービス「ChatWork」を利用し、店舗の売上のデータなどはGoogleのクラウドストレージ「Google ドライブ」内におけるスプレッドシートのアドレスを投げるだけにすることでIT業務を簡略化。

このように一般的なMicrosoft Officeを使わない理由として、ファイルの作成や保存、ファイルの添付などの管理まで店舗スタッフが行う必要があるが、Webアプリのスプレッドシートならファイルの管理や保存の必要もなく、理解しやすいことにあるという。

それでもITリテラシーが低い人には難しいということで、さらに独自にボタンを押すだけで利用できるように田原氏はプログラムを覚えながら社内システムをアプリ化に成功している。


さらにスプレッドシートを触らなくても、報告書が提出できるRPA(Robotic Process Automation)とチャットボットを開発。ChatWork内のチャットボットが各店舗の店長とやりとりをすることで、バックオフィス業務を円滑に進めることができるようになったとのこと。

では、なぜ今回の本題となるクリーニング店が機械学習(マシーンラーニング)や深層学習(ディープラーニング)といったAIに取り組むのか?


それは地方の特性上、過疎化と高齢化による利用者の減少、そしてクリーニング業界の市場規模の縮小による売上の減少があるという。田原氏はいかに店舗にコストを掛けずに円滑に業務を進められるか、これが今後地方でクリーニング店を営業していく上で重要と捉えているからだ。

田原氏は2015年にGoogleが開発するAIライブラリー「TensorFlow」がオープン化されたタイミングで機械学習について学びはじめる。まだその頃は周りのプログラマーも手探り状態だったということもあり、これはチャンスだと思ったという。


こうした地域の特性と業界の特性、そして機械学習を学びはじめたタイミングが「人工知能による無人店舗」というビジョンを生み出したというわけだ。


無人店舗といえば、商品に取り付けたRFIDを使ったものが1つの形となりそうだが、田原氏は画像認識を利用した無人店舗をめざす。

その背景には、導入コストと運用コストの低減にある。そもそもクリーニング店の場合は、商品を識別するためのRFIDが付いた無人のコンビニエンスストアとはシステムが異なること、加えて地域と業界の特性上こうした選択をしているようだ。

田原氏が2015年からYouTubeや英語の資料などを見ながらはじめた機械学習のプログラミングだが、その進化はめざましく今ではより多機能にそして使いやすくなっているという。

しかしながら、機械学習はプログラミングを覚えるだけではなく、学習させるためのデータ収集の壁が大きく、さらに集めたデータを機械学習させることも難解であったと話す。

現在、機械学習モデルが完成したものの、その後の業務オペレーションやそれに対する費用対効果の問題をどうしようかという段階なのだという。

開発した機械学習モデルは、カウンターに取り付けたカメラで静止画を撮影し続けて、来店検知と商品の画像認識の2つのフェーズで動作する。


来客していない状態の画像と来客中の画像を画像認識で選別してフォルダーに仕分けする。来客検知された画像に対しては、その商品が何であるのかを判別する。この商品の判別は、自動車の自動運転などで自動車や人を判別する「Realtime Object Detection」を使って行っている。


スーツやワイシャツなど利用頻度が高い商品はデータ収集が進み画像認識率も高くなっているが、季節ものや自宅で洗濯を行うTシャツなどまだまだデータが少ない商品もある。今後もデータの収集を行い、商品の分類を24点まで増やしたいとしている。




田原氏は今後の展開として、まずは本店にて実証実験を開始し、8月には一般用エンジンへ展開したいとしている。一般用エンジンとは例えば、家庭で洗濯をする際に服の写真を撮るだけで洗濯方法がわかるような仕組みを考えているという。

さらに、2019年前半にはクリーニング業界で利用できるようなプラットフォーム化をしたいとしている。これまで自分の課題として開発してきたものだが、クリーニング業界の課題でもあるという考えから、業界で役立つのであればプラットフォーム化したいとのことだった。

そして2019年〜2020年にはクリーニング店の無人店舗1号店をオープンしたいと語った。これらのメディアセミナーの一部は以下の動画でも紹介しておく。


動画リンク:https://youtu.be/EgrnZ0z55HM

田原氏は、今やノンプロラマーでも機械学習を利用した仕組みは作れるという。しかしながら、機械学習をどう利用するのかという課題の設定がまずは大事だと話す。そしてデータの収集がなくては機械学習の精度は向上しない。

こうした事例を目の当たりにすると、もっと小規模な事業やよりパーソナル部分でも機械学習を導入することで、業務が楽になるような仕組み作りもできそうだなと感じた。

記事執筆:mi2_303


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