能に由来する「見立て」による作品!江口 敬写真展「風姿」【Art Gallery M84】


歌舞伎座(東京・銀座)の真裏に佇むギャラリー「Art Gallery M84」は2015年9月14日(月)より江口 敬写真展「風姿」を開催する。

■和の心を感じる作品
今回の作品展は、Art Gallery M84の第36回目の展示として実施する個展だ。
写真展「風姿」は、強烈な色合いからくる印象が強く、何を描いたかが一瞬では判らないのだが、和の心を持ったアートだと感じる。眺めているとそれが飛行機雲かと思い始めるが、単に飛行機雲の美しさを切り取ったもので無いことに気づく。

能から着想を得ているという作品は、新鮮で人目を惹付ける。その「能」に由来する「見立て(※1)」による作品が今回の「風姿」であり、見る人の心の中に重層的なイメージを呼び覚ましてくれる。写真とも絵画とも違う彼の描き方は、まさに能の美学(※2)との共通性を見出すことができる。全て新作による24点(予定)のスクエアーサイズからなるオリジナルプリントを堪能できる。

※1「見立て」とは、或るものを別のものになぞらえること。二つの異なる対象の間に新たな橋を掛けることで、鑑賞者の内的イメージを時間的にも空間的にも拡張する方法論と言える。

※2 例えば、「葵上(あおいのうえ)」。源氏物語の中の有名なエピソードが元になっているこの演目では、貴公子・光源氏の寵愛を失った六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)が生き霊となり、光源氏の正妻である葵上を取り殺そうと襲いかかる場面が描かれるが、タイトルにもなっている葵上自身は登場人物としては一切姿を現さず、声も発せず、ただ一枚の着物(小袖)が舞台中央に横たえられ、その無生物たる着物が、生き霊に懊悩する葵上という一人の女性に見立てられる。これは、視覚上の面白さに訴えるだけでなく、原作においても存在感薄く描かれた葵上の人物像を同時に表現する、巧緻を極めた演出と言える。

■作家からの一言
今回、能をテーマとした作品を制作するに際し、能の劇芸術としての性格を写真に投影することを一番の目的としました。モティーフは、ご覧いただいておわかりのとおり、大空を横切る一筋の飛行機雲です。あるとき突如、虚空に白い痕跡を現し、すぐまた風に押し流されて跡形もなく消え去る飛行機雲。

その美しさと儚さに魅力を感じたのはもちろんですが、一方で、場所・時刻・季節・気象、さまざまな要素が加味されることによって自在に変化する飛行機雲の姿に、思わぬ感情の揺れや物語性を見出したことが、『風姿』と名付けたこの作品集誕生のきっかけでした。テーマとモティーフは、能がそうであり、また、近世以前の日本の多くの芸術がそうであったように、「見立て」の精神を介して結びつけられています。

一枚一枚の写真に、それぞれの絵柄から想起される能の演目名を付すことにより、古の物語に秘められた密やかなメッセージを主に視覚の面から現代に蘇らせようと企図しています。テーマとモティーフとが時空を越えて照応し合う、この場限りの仮構の世界に遊んでいただけるなら幸いです。

写真家 江口 敬

■江口 敬(えぐちたかし)氏の略歴
1972年 東京都三鷹市生まれ。
1995年 学習院大学法学部政治学科卒業。
学生時代に能(仕舞と謡)の稽古に勤しんだ経験を持つ。
Art Gallery M84(東京・銀座)を始め、東京都内や福島県内、仙台市内のギャラリーで個展開催・企画展等に参加。
福島県福島市在住。Webサイト http://egtkweb.exblog.jp/

■個展
2010年 写真展「Beyond」Kalos Gallery(宮城県・仙台市)
2012年 写真展「風渡ル組曲」風花画廊内 珈琲楓舎(福島県・福島市)
2012年 写真展「風渡ル組曲」Kalos Gallery(宮城県・仙台市)
2013年 写真展「Life is beautiful ?光の森?」iia gallery(東京・小伝馬町)
2013年 写真展「音のない言葉」Art Gallery M84(東京・銀座)
2013年 写真展「そのときの光」西会津国際芸術村(福島県・西会津町)
2014年 写真展「音のない言葉」風花画廊内 珈琲楓舎(福島県・福島市)
2015年 写真展「光の森」風花画廊内 珈琲楓舎(福島県・福島市)

■主な企画展・グループ展
2010年 公募写真展 「Sha-gaku」Kalos Gallery(宮城県・仙台市)
2010年 NEXT GENERATION写真展「Beyond」リコーフォトギャラリー RING CUBE(東京・銀座)
2011年「Gallery Collection & Photo Showcase」Kalos Gallery(宮城県・仙台市)
2011年「Gallery Selection 2011/Scene-1」Kalos Gallery(宮城県・仙台市)
2012年「珈琲楓舎 October」風花画廊内 珈琲楓舎(福島県・福島市)
2012年「第7回 2012コスモス展」ギャラリーコスモス(東京・目黒)
2013年 公募写真展「Sha-gaku vol.6」Kalos Gallery(宮城県・仙台市)
2013年 企画展「珈琲楓舎 October 2013」風花画廊内 珈琲楓舎(福島県・福島市)
2014年 公募写真展「Sha-gaku vol.7 Act-1」Kalos Gallery(宮城県・仙台市)
2014年 公募写真展「人それぞれ」Art Gallery M84(東京・銀座)
2014年 企画展「珈琲楓舎 October 2014」風花画廊内 珈琲楓舎(福島県・福島市)
2015年 企画写真展「Colorful」Kalos Gallery(宮城県・仙台市)

■その他
2011年「御苗場 vol.9 関西」海岸通ギャラリー・CASO(大阪市)
写真イベント「関西御苗場(かんさいおなえば)」にて、RING CUBE「NEXT GENERATION」出展経験者の一人として、作品展示及びアーティストトークのパネラーを務める。

Art Gallery M84は「アートを展示する場、鑑賞する場、購入する場」としてだけではなく、その先にある「アートを楽しみ、アートを通じて自己表現をしたい人々が気軽に集える場所」である。

ギャラリーオーナーいわく「アートをもっと身近に感じてもらうため、アートを観る楽しみ、作る楽しみ、作家と作家、作家とファン、ファン同士がつながって、アートの可能性を 広げていけるような拠点を目指している」そうである。

■写真展概要
名  称 : 江口 敬写真展「風姿」
作 品 数 : 約24点(予定)
作品販売 : 展示作品は、全て購入可能
主  催 : Art Gallery M84
期  間 : 2015年9月14日(月)〜2015年9月26日(土)※休館日を除く
場  所 : Art Gallery M84
所 在 地 : 東京都中央区銀座四丁目-11-3 ウインド銀座ビル5階
電  話 : 03-3248-8454
開館時間 : 10:30〜18:30(最終日17:00まで)
休 館 日 : 日曜日
入 場 料 : 500円(税込)

■江口 敬写真展「風姿」
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